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たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

SDGs

伊予灘再生プロジェクト始動!

たてヨコ発、久々の社会活動「伊予灘再生プロジェクト」が立ち上がりました。一言でいえば、“伊予灘にもっと藻場を取り戻して海を元気にしよう!”というプロジェクトです。
コラムを読んで面白そう!と思った方は、ぜひ応援をお願いします!

海のゆりかご

愛媛県の瀬戸内海域(伊予灘+燧灘)での漁獲量は、50年前に比べて1/3に減少しているらしいです(昭和50年 約6万トン→令和2年 約2万トン)。それには色々な原因が複合的に作用しているのですが、その原因のひとつと考えられているのが「藻場」の減少
https://www.pref.ehime.jp/h37100/toukei/index.html

藻場とは、海の中に生息する「海藻」や「海草」の存在する場所のことです。この藻場は水産資源の増殖に大きな役割を持っていて、海洋生物のゆりかごとも言われています。

この藻場ですが、1960年代には瀬戸内海に22,000ヘクタールあったのが、今では5,000ヘクタール程度と約1/4に減少していると言われています。
https://www.seto.or.jp/upload/publish/seto_vol_72.pdf
https://www.env.go.jp/water/heisa/survey/result_setonaikai.html

何故こうして藻場が消失するかと言うと、これもいくつか原因があるのですが、皮肉なのが「川の水がきれいになりすぎた」ということらしいです。昔の川の水には山や陸地から来る窒素やリンなどを適度に含んでおり、これらは海にとっての栄養分でした。しかし今では生活排水は下水処理場で処理され、市中を流れる河川は水路がコンクリートで整備されて、濁りのない実にきれいな水が流れています。

それ以外にも、もちろん沿岸域の開発も一因としてありますし、最近言われているのが海水温の上昇ですね。昆布のように冷たい水でしか繁殖しない海草もあるなど、温度域が変わると藻場の生態系にも影響しますし、海草を食い荒らすアイゴやイシダイなどの植食性魚類の活発化も一因と言われています。

ブルーカーボン

近年SDGsの文脈で、#14海の豊かさを守ろうという動きの中、この藻場を保護し再生しようという機運が高まっています。また、#13気候変動の文脈でいえば、「ブルーカーボン」という考え方があります。森林を増やすことで二酸化炭素を吸収しますが、この吸収分を企業間で売買するシステムを「カーボンクレジット」と呼びますよね。これを森林ではなく「海草・海藻・干潟」で取引しようというのが、ブルーカーボンというものです。確かに、藻場が増えると二酸化炭素を吸収してくれますからね。この辺りは、白石綾さん、山中三沙貴さんがお詳しい領域です。

私自身も、はじめはこのブルーカーボンに興味があり、このプロジェクトに関わりました。本業であるミウラのビジネス領域として、カーボンクレジットビジネスの可能性があるのではないかと考えたからです。ところが、結論から言えば、このブルーカーボン単体でビジネスが成り立つことはないことがわかりました。

どれくらい難しいかと言えば、以下の通りです。

●削減したいCO2量=日本人1人分=10トンCO2/年 とします。
●この時必要な藻場の面積は 1ha=サッカー場の1.5倍
●カーボンクレジット(1万円/トンCO2)として 得られる収入=10万円

一人分が排出するCO2をブルーカーボンの資金で削減しようとすると、10万円でサッカー場の1.5倍の大きさの藻場を再生しないといけないということになります。普通に考えると桁が二つほど足りませんよね…。

ですので、ブルーカーボンで得られる資金だけで藻場を再生することは不可能なわけです。ということで、この活動を継続することをあきらめかけていました・・・。しかし!

恐るべし!大木組合長

松山にはすごい人がいました!それが大木等さん。松山市漁業組合の組合長です。この方は20年以上にわたり松山市周辺の海域で藻場再生活動に取り組まれている方です。この方と私たちをつなげてくれたのが塩崎彰久さん。BLAST NIGHTで私が塩崎さんに何気なく話したブルーカーボンというキーワードをきっかけに、大木さんを紹介していただきました。

藻場の再生にはいろいろな方法がありますが、大木さんは「鉄鋼スラグ方式」という独特な手法を用いています。製鉄の際に出てくる廃棄物である鉄鋼スラグを海中に沈め、そこに藻場を再生させるという方式です。海底に沈んだ海賊船がボロボロになって海藻とかサンゴとか海洋生物の住処とかになってる映像を見るでしょう?鉄とか石を海洋に沈めてしかるべき条件が整えば、そこが藻場=漁礁になるという理屈です。大木さんは20年前から色々な補助金、助成金をベースに松山沖で定期的に藻場再生に取り組まれており、着実に成果をあげられています。

藻場というものは太陽の光が届く水深15~20M程度の沿岸にしか存在せず、これは世界の海洋全体の0.2%に過ぎないのですが、瀬戸内海では何と20~30%(40~60万ha)が水深20M以下の「浅い海」に該当します。すなわち、藻場造成のポテンシャルがめちゃくちゃ大きいということです。

結成「伊予灘再生プロジェクト」

こういう出会いもあり、「伊予灘再生プロジェクト」が結成されました。

プロジェクトオーナー
大木等              松山市漁業組合長
70代とは思えない熱意と行動力のある方。松山市の大部分の漁業域を管轄。国内でも珍しい、とても先進的な漁業組合長。

本体チーム
塩崎彰久           衆議院議員
説明は不要でしょう。愛媛のスーパースターから日本、世界のスーパースターへ進化中。プロジェクト全体指揮官。
戒能潤之助        愛媛県議
小学生になる前から一人で釣りに行くほどの海の申し子。愛媛県とのやりとりをやっていただいています。
原俊司              松山市議
松山でこの方を知らない人はいないのでは?と思えるほどの人気者。松山市とのやりとりをやっていただいています。

イベントチーム
谷田吏              塩崎彰久秘書
興居島出身と言うことで、地元との強いつながりと、地元への熱い思いを持つ。本プロジェクトの調整役であり、影のリーダー。
井上大輔           株式会社 LINK WOOD DESIGN 社長
まさに木の魔術師。数々の木材を用いたプロダクトをデザイン、製作する会社の社長。激熱魂の持ち主ですでにエース級の活躍。
大西竜治           WM & Creators, Inc. CEO
ウェブ系デザインのプロフェッショナル。海の再生に関心があり、持ち前のあふれ出るクリエイティビティでプロジェクトを推進する。
内藤衣里           株式会社ダイキアクシス
愛知県からダイキアクシスへ入社。環境活動を模索する中、本活動に巻き惹き込まれる。非常にアクティブ。
岡部明吉           哲学者
この方の説明は、Faceboookのコメント欄を参照ください。
善家美貴           三浦工業株式会社
以前、スキューバダイビングのインストラクターとしてフィジーで暮らしていた経験あり。潜る系のタスク担当。
テイト永渕           三浦工業株式会社

そして、この活動のスタートに選んだ地域が、「興居島」です。もともと大木さんが鉄鋼スラグ方式をずっと取り組んでこられた地域と言うことと、谷田さんの生まれ故郷ということでここが舞台になりました。

この中で、大木さんをはじめとする「本体」チームは国や県の補助金を活用しつつ、引き続き鉄鋼スラグ方式の藻場再生に取り組みます。しかし、このまま補助金のみに頼っては持続可能な藻場再生は見込めないよね・・・、かと言ってブルーカーボンでは経済合理性がないし・・・、という課題感から、谷田さんと私の方で「イベント班」を編成しました。その後、様々なタレントを持つ上記の方々が“自主的に”加わってくれました。※強制的に巻き込んだわけではない。

その時谷田はかく語りき

こうした藻場造成活動をイベント的扱いとして、社会活動や教育活動に展開して、そこに企業から資金を調達したり、あるいは観光コンテンツとしてマネタイズしたりできないものかと模索している次第です。こうした検討の中、谷田さんから素晴らしいアイデアが飛び出しました。

「空き家から出る廃材や島で間伐した柑橘木材を活用して藻場・漁礁を作ってはどうか?」というものです。

これは面白い取り組みです。まず、古くなった空き家問題と漁場の再生を同時に解決する一助となる。さらには、柑橘木材の利用により愛媛ならでは、興居島ならではの取り組みになる。空き家を解体して廃材や瓦を集め、柑橘の木材を回収し、それで藻礁を手作りして自分の手で海に沈める。こういう一連のアクティビティは社会活動xエンタメ的要素があるのではないかと考えました。

巻き込まれた自主的に集まったイベントチームメンバーたちは、11/23(木・祝)に、漁礁製作のテストを実施しました。谷田さんがアレンジした空き家の廃材と、ミカン栽培スペシャリスト小林さん提供の柑橘の木を使い、なかなかいい感じの漁礁枠が出来ました。製作にはインテリアデザイナー井上さんのスキルがいかんなく発揮されました。

その後、地元の有力漁業者である香川さんの協力で、漁船を出していただき漁礁を沈めるスポットを視察。手作り漁礁製作・設置のイメージがわきました。今後詳細に関して打ち合わせを重ね、2024年春ごろ実際に藻場を設置する作業を行いたいと考えています。

一歩一歩は小さいが

こうやってできる藻場、漁礁はとっても小規模なものではあります。しかし、こういう活動を通じて愛媛で社会的な認知が広がり、観光や企業スポンサーから資金が集まれば、本体チームが進める鉄鋼スラグ方式(またはそれ以外の大規模方式)による藻場造成が持続的に進む可能性があります。

貢献者と受益者がわかりにくいのが難点ではありますが、この結果が漁獲量のアップにつながり、地元の経済の活性化にもつながるのではないかと考えています。同時にカーボンの吸収量が増えわずかではありますが脱炭素に貢献できます。こうしたポジティブな善意の連鎖を夢見つつ、この度この伊予灘再生プロジェクトは立ち上がったわけです。

ということで、私たちに共感した皆さん、最初にも言いました。金銭、物品、肉体など見える形での応援をお願いします!!決して強制はしません!※ねえ大美さん。

ABOUT ME
テイト 永渕
1972年生。愛媛県に本社がある三浦工業株式会社で企画統括部に所属。機械エンジニアとして入社し、その後アメリカ駐在を9年間経験。 2019年6月に稲見さんとともにNPUG愛媛交流会をはじめ、それが今のたてヨコ愛媛の原型となる。愛媛で最も面白い人たちが集まる社会人コミュニティを作りたい。ニックネームはテイト(Tate)。
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