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たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

知られざる高校生の海外進学事情と地方格差

こんにちは!

3回目のコラムとなりました谷村一成です。

過去2回は、愛媛県内の外国人住民の課題やそれに対するえひめインターナショナルMeet-upの取り組みについて書いてきました。

次回イベントチラシ

ちなみにいきなり宣伝で恐縮なのですが、来月ワクリエ新居浜さんでクリスマス会を開催しますので、もしよかったらご参加ください!

さて、今回はガラッと話題を変えて、高校生の海外進学事情についてお話ししたいと思います。

みなさんの身の回りに、海外進学された方っていらっしゃいますか?

あるいは、ご自身がご経験されたという方もいらっしゃるかもしれませんね。

あ、海外留学ではありませんよ。進学です。

つまり、日本の高校を卒業後、日本の大学に進学せずに直接海外の大学に入学することです。

日本の大学に入学した後に、語学留学や交換留学などで海外の大学に行くことは該当しません。

「え、日本人が海外の大学に入れるの?」って思った方も少なからずいらっしゃると思います。実は私も以前海外進学の話を聞いてそのように驚いた1人なんです。

私自身、高校生の頃に周囲で海外進学をする人はいませんでした。(気づいていなかったというのが正確ですね。)大学も東京の学校に進学し、短期留学を経験しました。

ではなぜ海外進学という選択肢を知ったかというと、、、?

それは、新卒で入社した人材エージェントがきっかけです。

そこで私は、海外進学をした日本人学生が、帰国して日本企業に就職する際のサポートをする仕事をすることになり、本格的に海外進学した日本人学生と出会うことになりました。

これまで出会った日本の大学に通っている日本人学生にもたくさん面白い方がいましたが、また違った学びや視点を持っていて、海外進学した日本人学生と関わることはとても楽しい日々でした。ですが、ある時気づいたんです。ほとんどが東京出身者であるということを。

調べてみるとびっくりです。海外進学は、都市部偏重の選択肢なのです。年間、少なくとも2,000人の中高生が海外進学していることは各種データを組み合わせると確実に言えます。全てを網羅した統計は存在しないため、実際にはこれよりはるかに多い人数が海外進学している可能性もあります。東京には、1学年で100人以上が海外大学に合格するような学校も存在します。

日本の大学と海外の大学を併願する高校生にも大勢出会いました。

一方で、四国地方は最も海外進学が少ないと見込まれます。私が四国の各校をまわった肌感覚ですが、四国4県合わせても10名程度ではないかと思われます。これは大きな教育機会の地域間格差があるのではないかと気付きました。

上記のデータは、進学校に限定した海外進学データですが、四国のみが0人という悲惨な状況です。ちなみに2022年は徳島から1人。2021年は同じく0人となっています。

ちなみに海外進学をした学生の話を聞くと、そのきっかけは高校生の頃の留学経験であることが多いです。しかし、この高校生の留学経験も顕著に三大都市圏の高校生が突出しています。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響もありますが、四国4県で21人。愛媛県だとわずか5人です。

「2023.3.31報道発表令和3年度高等学校等における国際交流等の状況について」より引用

なお、内閣府はグローバル人材の育成の必要性を長らく発信していますが、その中で同一年代の10%が留学等を経験するという目標を立てています。これに対して、コロナ前の2019年のデータでは、最も高い京都府が2,073人で3%となっており、なかなか10%は難しいんだなぁという感じですが、四国はもっと厳しくて、4県合わせて1,005人で1%です。目標の10分の1、都市部(東京などもおおよそ3%)の3分の1という結果です。

近年、生まれた地域や育った家庭環境で体験格差が広がっており、総合型選抜などテストの点数だけではない評価に国内進学も切り替わっている現状では、この体験格差の拡大は四国の将来を担う若者が、よりよい教育の機会を、四国に生まれてしまったがために得られないという事態につながる恐れがあるのです。

ここまで読んで、「でも海外進学って金持ちで飛び抜けて頭のいい子どもの話でしょ?一般人には関係ないよね。」って思った方、大間違いです。残念ながらこのような海外進学に対する偏見は地方ほど根深いですが、、、

私はよく出前授業などで海外進学についてお話しする時、海外進学は経済的ギャップを解消する手段になり得るという話しをしています。

例えば、海外進学と聞いて真っ先に思い浮かびそうな国はアメリカやイギリスですよね。日本よりとんでもなく高い学費で有名です。しかし、給付型の奨学金が充実しています。日本の民間の奨学金もありますし、各大学が多様な生徒を確保するために奨学金や学費免除の仕組みを用意しています。日本の大学のように、一部の秀才だけが対象の奨学金ではなく、比較的多くの学生が利用しています。奨学金の利用は海外進学だとスタンダードです。そして、原則返還不要です。

また、近年人気なのが台湾やマレーシアといったアジア圏や、ハンガリーやチェコといった東欧圏です。これらの地域は、学費や生活費がそもそも日本より安いです。わたしの友人で、マレーシアで年間10万円程度の学費で大学に通っている方や、ハンガリーで全額無償で医学部に通っている方がいます。

日本の大学のイメージだと、大学ってその国の言語で学ぶ場所という感じですが、世界のスタンダードは英語での大学教育です。わたし、マレー語話せない、チェコ語話せない、という心配は不要です。

他にも、海外進学は受験ではなく多くが高校の成績などの書類選考のみで決まることや、いま語学が苦手でも準備コースを経由する方法があることなど様々な「地方の普通の高校生にとって現実的な選択肢である理由」があります。ではなぜ四国はこんなに海外進学が少ないのか。単に選択肢を知らないだけです。そして、たまたま知ることができても、周囲にロールモデルがおらず、偏見を持った大人に止められてしまうからです。

この現状をなんとかしたいと思い、昨年から主に四国の中高に、海外進学した先輩の体験談を聞いてもらう出前授業を行っています。愛媛県では弓削中・弓削高と宇和高三瓶分校で開催しました。生徒たちは、「え、日本人って海外の大学に入れるんですか!?」「世界って広い!」「家庭の事情で大学諦めてたけど、海外ならいけるかも!」といった声をいただいています。

弓削中高生たちに体験談を話す

今年はもっと多くの学校に届けたい。そのために、現在出前授業を実施可能な学校を探しています。また、対面開催のための旅費交通費を寄付募集しています。

詳細はこちら↓

https://t.co/dzqfGSQJCU

ぜひみなさんのお力をお貸しいただき、愛媛の中高生たちに広い選択肢を知っていただくチャンスを!よろしくお願いします。

ABOUT ME
谷村 一成
1994年香川県高松市生まれ。高松高ー中央大。フォースバレー・コンシェルジュ株式会社で四国地方の企業の高度外国人採用支援に従事。(2018-2021)現在、DAYS BLG!はちおうじで介護職員として認知症当事者の社会参画に従事。また、特定非営利活動法人みんなの進路委員会を設立し、主に四国地方の中高生の主体的な進路選択を支援。えひめインターナショナルmeet-upを設立し、愛媛県内の多文化共生を目指す。その他、グリーンバード高円寺チームリーダー、行政書士、フリーライター、香川県高校野球マスターズ連盟会長など
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