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撲滅困難なハラスメントと向き合う、「スイスチーズ」的思考法。

「スイスチーズモデル」から、ハラスメントを考察する

 英国の心理学者、ジェームズ・リーズンが提唱した事故モデルが「スイスチーズモデル」。「事故(ミス)は単独で発生するのではなく、いくつかの穴をすり抜けて発生する」という考え方です。

さすが天下の「いらすとや」さん…。。

 先ほどから私が繰り返している『発生』という表現方法には理由があります。

 ハラスメントは加害者(もしくは被害者)という「人」ばかりにフォーカスを当てたものではなく、「発生場所を取り巻くすべてのもの」に原因があると捉えているからです。

 決して起こってはならないハラスメント。しかし、「(誰かが)する」という表現は時として適切でないことがあります。「ハラスメント」というエラーの誘発要因においては、必ずしも「ヒューマン(個人)」とは限りません。「システム(環境)」に問題があることもあります。

我慢が当たり前だった環境を乗り越えざるを得なかった上層部の時代背景」、「不適切な人材評価による精神的ストレス」、「コミュニケーション不足」、「国内の経済不況と経営環境」、「閉鎖的環境」、「公的に認められたヒエラルキーシステム(あ、ぜひコチラをご覧ください)」これらがハラスメントの一因になっていることも否めません。

 よく言われる「パワハラが仕事に対する熱意と表裏一体」という考え方も、「仕事に熱意を燃やすとパワハラが発生してしまうこの現状は何故だろう」と考えるのが大事かもしれません。

 歴史というチーズの穴をすり抜け、個人が形成されていく上で大事な家族という小さなコミュニティで生じたチーズの穴をすりぬけ、ステレオタイプというチーズの穴をすりぬけ、法律というチーズの穴をすりぬけ、いま置かれているコミュニティ環境というチーズの穴をすり抜け―…。最後は加害者本人の穴をすり抜けてしまったことで、ハラスメントも起こり得るのかもしれません。重ねれば重ねるほど塞がるはずの穴。なのに、なぜすり抜けていくのでしょうか。チーズの穴の位置や大きさは千差万別。ハラスメントがすりぬけてしまう大きな穴とは一体―…。

 加害者側がハラスメントを起こしてしまったことを顧み、反省するばかりではなく、ぜひ被害者・傍観者となったあなたもハラスメント発生の背景を考えてみてください。もちろん、その要因を知ることで「それなら仕方ないね」と諦めることは言語道断。(ハラスメントの加害者側は特にこの考え方は危険。「仕方ない」なんて簡単に済ますからいつまでも過ちを繰り返します。)ただ、自ずと個人を訴え、責めるることだけが得策ではないことに気づくのではないのでしょうか。その思考から起こせるあなたの行動が、いまの環境を変えるきっかけになるかもしれません。

思考の原点は「医療安全」

 突然、「医療」という言葉が出てきて驚いた方もいるかと思いますが、筆者の本職は医療従事者になります。失敗が許されない医療ですが、実は患者が知り得ないところで日々小さなエラー(ヒヤリ・ハット、インシデント)が起こっています。しかし、そのミスは起こした医療従事者だけに原因があるわけではありません。患者的要因(点滴の自己抜去や認知・意識レベル低下による予想外の行動など)、物品的要因(薬品名の類似品の多さ、医療機器の汎用性・デザイン性の欠如など)、環境的要因(超過労働、非効率な動線、偏った人材配置など)―…。 複数の人や組織、ハード・ソフト面など、あらゆる要因が重なって発生してしまうのです。万が一、不測の事態やミスが起こったとしても、個人を責めるのではなく、その後の情報分析と評価が重要です。そこから改善するチカラが、医療の質向上と安全の管理に繋がります。

吾輩は、穴だらけのチーズである。

 ハラスメントは、人間という不完全なチーズによって起こるもの。そんな不完全なチーズにさらに大きな穴を空けてはなりません。ハラスメントは、起こす側も受けた側も、必ずその人の「穴」を大きくする要因になります

 ハラスメントに限らない話ですが、人間があらゆる知恵と経験を身につけても、「これさえを行えば完璧」という対策は未だに見つかっていません。とにかくチーズの枚数を増やすこと、または、それに相当するシステム構築などによってチーズの穴を塞ぐことができるかもしれません。小さな経験、対策をコツコツ毎日積み重ねること、多様な人材が重なることが大事なのでしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事を書いている人間が少しでも気になったアナタ。

今週末、ぜひオンラインで会いましょう。

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…お腹が減ってきたな…。出前でもとろうかな…。

RRRR…

「あ、もしもし。ピザLサイズひとつお願いします。トッピングはダブルチーズ追加で。」

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ABOUT ME
岡田 未奈
愛媛県松山市出身の平成生まれ。 「いのちをささえるエンジニア」である臨床工学技士として県内の医療施設に従事。人工透析を主業務として、呼吸治療、心血管カテーテル治療、不整脈治療、医療機器管理などを兼務。  一方で、『医療にDESIGNを。』をコンセプトとしたパラレルワーキングをしており、ライター、グラフィックレコーダー、プレゼンテーションデザイナーなどマルチクリエイターとして多彩な顔を持つ。 2021年4月より京都芸術大学大学院で社会を変えるための創造力となるデザイン思考の研究を始めるほか、2022年4月より青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラムに参加。 愛媛県下で学生や一般社会人を対象としたデザイナー的マインドを養うためのコミュニティや学術的な場を創ることが目標である。
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