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たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

じ・つ・は、あなたも心不全かもっ‼!?

皆様、こんにちは。早いもので4回目の投稿をさせていただきます。

心不全は現在100万人以上の患者さんがいるとも言われており、心不全パンデミックといわれています。原因は高齢化によるところも大きいですが、生活習慣病の増加、欧米化した食生活、成人の運動不足、社会からの精神的なストレスなどが挙げられます。今回は勘違いされていることが多い心不全についてクイズ形式で解説しようと思います。

Q 心不全とは心臓の動きが悪いことである 

A ×

そもそも心不全と心臓の動きが悪いこととは別問題です。これを勘違いしている人があまりにも多いのです。

問題はその人の臓器が必要としている血液量を、その人の心臓がちゃんと供給することができているかということです。

心臓の動きが悪くても各臓器が省エネで活動できていれば心不全にはなりません。

逆に心機能が良すぎる心不全というものもあって、これはホルモン異常などで心臓に鞭打って働かせた結果、心臓がへばってしまって心不全を起こしてしまう状態です

つまり、心不全は「心が悪い」という問題ではなく、血のめぐりが悪い、「血液の需要と供給のバランスが取れていない」ことが問題なのです。

Q 心不全になると胸が痛くなる  

A  ×

胸が痛くなるのは狭心症で心臓の血管が詰まる病気です。心不全とは別の病気です(もちろん心臓以外で胸が痛くなることもあります)。ただし、心不全を胸が苦しいと表現する人はいます。

心臓はポンプであり、返ってきた血液をまた送り出すという働きをします。

このポンプが機能しなくなるのが心不全であり、その結果起きる問題は2つあります。

「手前のうっ血」と「先の血流障害」です。

例えば、あなたはamazonの配達員です。注文された荷物(血液)を各家庭(各臓器)に運んでいます。ここで配送車が全部故障してしまいました。

すると倉庫に注文された商品がどんどん溜まってしまい(うっ血)、

各家庭に荷物が届かなくなってしまいます(血流障害)。

うっ血になると肺や足に水が溜まり、息切れやむくみを引き起こします。血流障害になると意識消失や倦怠感の原因になります。他にも夜間の咳、食欲不振、頻尿など実に多彩な症状が出現します。

Q 心不全になると命に関わりますか 

A △

 心不全にはAからDまでステージがあって順に重症度が上がります。ステージCとDの心不全になってくると入退院を繰り返し起こすようになり、その都度寿命が削られ、いずれ死に至ります。これが皆さんのイメージする、テレビで有名人の死亡理由として報道されるような心不全です(下図)。

急性・慢性心不全診療ガイドライン 2017年改訂版より

 ではステージAとBはどうでしょうか。彼らはまだ心不全を発症はしておらず、その危険性を持っているだけです。つまり、高血圧や糖尿病を持っている人はステージAの心不全とも言えるのです。ドキッとした方、いますよね。ただ、このリスク因子を持っているだけの患者さんはすぐに命に関わるということはほぼありません。心不全と一口に言っても重症度に大きな違いがあることがお判りいただけたでしょうか。ただし、ステージが上がっていくと元には戻らないため、元気なうちに予防することが大事というわけです。

Q 心臓が悪い人はあまり動かない方がいいと聞いたのですか 

A ×

心不全の患者さんにリハビリを行うことは非常に重要です。心不全の急性期で点滴が山ほど必要な時にはリハビリはできませんが、状態が安定してくれば早期にリハビリを行うことは重要です。それによって筋力低下の予防、認知機能低下の予防、早期退院が見込めます。リハビリを行うときは心電図や酸素を測る機械で脈拍や酸素の数値を測りながら行うことで、比較的安全に心臓リハビリを行うことができます。足は第2の心臓といわれます。足の筋力を維持できれば足の血流を心臓に引き戻すサポートをしてくれるので心臓の負担が減ります。

Q 心電図をとれば心不全はわかりますか 

A ×

心電図だけで心不全を診断することが不可能です。いろんな検査や症状から多角的に診断する必要があります。症状としてむくみや呼吸困難があるか、胸部レントゲンで肺の水貯留や心拡大がないか、エコーで心臓の動きや逆流防止弁に異常はないか、血液検査で腎機能や心臓の数値に異常がないか、など見るべき項目は多岐にわたります。これらを総合的に判断して心不全の診断を行います。

Q どうすれば早期発見できますか

A 両足が象のように腫れてきたり、トイレに行くだけでも息が上がるようになってきたりすればわかりやすいかもしれません。しかし、高齢者だと症状が出にくく、年のせいだとセーブして症状が隠れてしまうことがあります。特に両足が腫れるのは心臓や腎臓が悪い可能性があります。もう一つ、他の病気ではあまり出ない症状として起座呼吸があります。これは横になると肺にたまった水が肺全体に広がって苦しくなるため、座っている方が楽という肺の水が溜まっている人に特徴的な所見になります。後は水が体に溜まれば体重が増えるため、1週間にプラス2㎏増えるなどの急激な体重増加は脂肪ではなく、水が溜まっている可能性があります。あまり症状がなくても早めに受診した方がいいでしょう。

Q 症状が出てから受診したらいいですか 

A ×

心不全はひとたび起こすと、それ自体が体へのダメージになりますので予防が極めて重要です。完全に予防はできなくても早めに治療介入してあげれば、入院や点滴をせずともコントロールできることもあります。心不全予防薬の内服はきちんとすることが大前提ですが、心不全になって水が溜まってくると腸にもむくみが出てきます。すると薬の成分が吸収されにくくなり、利尿薬が効かなくなった結果、さらにむくむという悪循環になります。そうなると内服ではコントロールできず、点滴や静脈注射によって直接薬を体内に入れなければどんどん心不全が悪くなってしまいます。もちろん、心不全を起こして入院しても点滴をすれば一時的に改善がすることもあるでしょう。ただ、心臓の状態としては完全に元通りではなく、入院するたびにダメージが蓄積されていきます。そしてとうとう入院しても点滴しても心不全がコントロールできなくなり、死に至ります。

投資家で有名なウォーレンバフェットも「あなたが車を1台持っていて、一生その車にしか乗れないとしよう。当然あなたはその車を大切に扱うだろう。」というように、その人の幸福度を上げていくために、健康以上に必要なものはないでしょう。仕事を言い訳にせず、体を大事に扱いましょう。

ABOUT ME
藤澤 友輝
1988年香川県高松市生まれ 2013年愛媛大学医学部医学科卒業 松山市中病院にてにて研修→東京六本木の心臓専門病院にて研鑽 2021年~地元愛媛大学で循環器内科専門医として勤務中 2022年~キープウェルネス代表としても広く活動開始 資格:循環器専門医、内科認定医、心電図検定マイスター、剣道3段 初めまして。愛媛で循環器内科として勤務している藤澤といいます。医師として日々患者さんに貢献してる中で、勤務医個人としての活動の限界と自宅での健康管理の重要性を考えるようになり、キープウェルネス代表としても活動を開始しました。 経営者としてはまだまだ若輩者ですが、愛媛で何とか事業を立ち上げ、愛媛の方々の健康に貢献できればと考えております。ぜひ、ここに参画されている皆様の健康や医療に関するニーズをお聞かせいただければありがたいです。 私の持っているものであれば喜んで提供させていただきます。よろしくお願いします。
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