現在、私は(株)アイムービックでWebサイトを軸とした企業のWebサイトやコンテンツ企画、制作をディレクターという役割で日々お仕事をしております。
過去のコラムでは 解釈や価値観に変化を生み出す「リフレーミング」 や アナロジー思考で問題解決力とクリエイティブな説明力を鍛える など、自分も半ば無意識に使っているデザイン的思考法について考えてみました。
今回は、もっと本質的といいますか、そもそも論的な「デザインってなんですかね?」「どう活かせばいいのかな?」について考えてみようと思います。
人によってはとても退屈なお話なので、昼寝しながら読んでいただければ幸いです。
※あくまでこれは私の解釈であり、この手の哲学的な話に明確な答えを求めてはいけません。
デザイナーってどんな人?
皆さんの中で「デザイナー」とは、どんな人でどういった仕事をする人でしょうか。
ありがちイメージとして「絵がうまい」「音楽をやっていた」「ロゴやグラフィックを作っている」「黒いタートルネックにデニムの無精髭と黒縁メガネ」といった人物像を持たれているかと思います。
ウィキペディアによると、デザイナーの職種は「空間」「こと」「グラフィック」「その他」と4つの分類と38種ほどに分類されているようです。
参考:ウィキペディア/デザイナー
私が関係するWeb制作でのデザイナーは「ウェブデザイナー」で「グラフィック」に分類されていますが、最近ではUXデザイナー、サービスデザイナー、デザインストラテジスト(戦略)といった、モノづくりよりも設計や戦略、経営に軸足を置いた「サービス全体」「企業のありかた」といった大局を俯瞰するポジションが生まれています。
これらは、制作ジャンルの技術知識だけでなくマーケティング、心理学、経済学といった横軸の知識が掛け算され方法論も研究されています。
ご存知の方も多いであろう具体例としては、デザインファームのIDEOの創設者デイビット・ケリーがスタンフォードで始めた「デザイン思考」、経産省と特許庁が出した「デザイン経営」など。
ちなみに、上記のような深堀りをすると「デザインはアートではない」というの一つの説が成立しがちなのですが、時に審美性やアーティスティックな要素はデザインを構成する重要な一部となるため、結局のところ「時と場合にによる」というゆるふわなグラデーションを持っています。
デザインって何でしょう?
上記、職業としての幅が広がっているのがデザイナー。
では、その人達が日々取り組んでいる「デザイン」とは何でしょう?
多様な仕事に枝分かれすることからも「デザインは◯◯である」と明確な定義ができず、時には明確に「何かをつくる」行為もデザインであり、時には「取り巻く全てを含む営みそのものをつくる」といった概念的なものもまたデザインであると言えます。
ウィキペディアでは、デザインの語源として以下のように書かれています。
デザインの語源はデッサン(dessin)と同じく、“計画を記号に表す”という意味のラテン語designareである。
また、デザインとは具体的な問題を解き明かすために思考・概念の組み立てを行い、それを様々な媒体に応じて表現することと解される。
日本では図案・意匠などと訳されて、単に表面を飾り立てることによって美しくみせる装飾(デコレーション)と解されるような社会的風潮もあったが、最近では語源の意味が広く理解・認識されつつある。
はい出ました。よくわかりませんね。
さらに読み進めると、難しい諸説が満載で自分がアホになった気持ちになれます。実際アホかもしれませんが。
さらにこのジャングル(記事)の奥地へ進んだところに「デザインは設計」と書かれたところがあります。
本来この語は設計のことであるが、デザインはさらに形態や意匠に限らず、人間の行為(その多くは目的を持つ)をより良いかたちで適えるための「計画」も意味する。人間が作り出すものは特定の目的を持ち、それに適うようデザイナー(設計者)の手によって計画されるのである。
私の中でも「デザイン≒設計」は概ね「そうだよね」と思っていて、多くのデザイナーもこの解釈に同意されると思います。
では、なぜ「デザイン」は「設計」と言い表すのか?
その問いに対しては「デザインを構成する要素」を分解すると見えてきます。
デザインを分解すると分かる「デザイン≠ビジュアル」の話
この数年で業界以外でも耳に触れる事が増えた「UX[User Experience]」。直訳すると「ユーザー体験」となります。
これまで「使う」「触る」「見える」「聞く」「香る」「食べる」といった、最終地点で活用されることが多かったデザインが、スマホアプリや複雑なウェブサービス、はたまたD2Cビジネスなどをはじめ注目されるようになったキーワードで、先述のような「これからはタッチポイントだけでなく、サービスを通じた体験全体をデザインする必要があるよね」といった課題から生まれたものです。
職種の所でも少し触れた「UXデザイナー」はまさにこの体験設計を行う人になるのですが、つまりデザインが見た目だけでなくもっと手前の設計段階から考える必要が出てきた。という流れを見ると「デザインは見た目だけの話ではなく、設計をしっかり考える必要がある」ということがわかります。
とってもややこしく長ったらしく書きましたが、家造りで想像してみると「見た目優先でコトを進めると、構造上不可能な希望が出てくる」というのがわかりやすいです。
5W1Hの中で最も大切にしたいのは「Why?」
企画や課題解決の際よく使われるフレームワークで5W1Hがあります(5W3Hもあるようですが)。デザイナーは、この中でも依頼や相談を受けた時に「Why?」を一番に考えます。
同時に「Why?」から最終地点の「How」に至るストーリーをとても大切にするので、例えば何かデザインを相談したとして、依頼者が「赤色にしたい」と言っても正直あまり聞いていなかったりします(笑)。
そこは5W1Hの中でいう「How(どのように?)」で、デザイナーとしては「なぜ赤なのか」「本当に赤で良いのか」の理由が通らない限り、その色や形や見せ方の結論は後回しになります。
だからといって「全く言うことを聞いてくれない‥!」という話ではありません。依頼する側は「目的が何か」「なぜこうするのか」といった背景をしっかりと伝えると、デザイナーも前のめりに話を聞いて相談に乗ってくれると思います。
話がデザイナーの扱い方になりそうなので戻しますが、「より良いもの」を作ろうとしたとき、一番ワクワクする「どう見せるか」の話をぐっとこらえて、まず中心となる「なぜ?」を考えることは、チームや他者と一緒に何かを作る時にとても重要な軸となり、同じ方向を向いて自律的に駆動するためのエンジンとなるため、ぜひやってみてください。
Why?の重要性については、TEDの中でも最もダウンロードされたとされるサイモン・シネック「WHY?から始めよ」のゴールデンサークルのお話を見ていただければすぐにご理解いただけるかと。
自分なりに思う「デザインのこれから」
ここまで長々と書いてきたことは、絵の書き方でも設計手法でもデザインの方法論でもデザイナーになるためのHow toでもなく、今すぐには役に立たない、ただの「考え方」です。
ですが、今回ご紹介したような「デザイン的な考え方」は、仕事でも普段の生活でも色んな所で役に立つと思っていて、この考え方が様々な人達に活用され、より豊かな発想で世の中がより良く前進するといいなと勝手に思っています。
同時に、これがまさに「デザインのこれから」だと感じています。
はいようやく結論出ました。
ここまで諦めずに読んでくださった心優しいあなたがいらっしゃるから私は生きていけます。デザインのお話と言いながら、ながながとビジュアルの無い構成で申し訳ないです。
デザインの話をしながら、良い構成でデザインされていないとはこれいかに。