「山田先生の授業は面白いらしい」・・・らしい。
いやはや、そう言って頂いてるのはなんとも有り難い話である。
(自己申告じゃないのよ。マジで有り難い。)
私が初めて専門学校で教えたのは2000年。
既に24年になろうとしていることに改めて我ながら驚く。
初めて教えた学生達は既に42歳超えか。
奴らもオッサンなら私も紛れもなくそうなんだろう。自覚はあまりないのだが。
授業のタイトルは面白そうに
ここ最近、私は関西の大学を中心に経済や経営を初めとしたデザインとは無関係の学部生に、そして弊社で顧問契約を結んでいる企業の経営者や営業、設計部門に対して、デザインやデザイン思考、ビジネスデザイン、ブランディングなどに関しての講義やメンタリングを行っている。
そしてこれら講師業のメインとなるのが県内デザイン専門学校1年生を対象とする前期課程の全30コマで展開する「デザイン概論」。その30コマで行うシラバスが下記。
- 01.これからクリエイターを目指す皆さんへ
- 02.クリエイターへの第1歩目(「これまで」と「これから」の意識改革)
- 03.「デザイン」と「アート」と「クラフト」と「図工」(デザイン業務フロー)
- 04.ビジネスと経済とクリエイション(世界一簡単な経済の話)
- 05.センス有る!って思ってる?~センスとはなにか?~
- 06.「デザイン」と「Design」
- 07.良いデザインと悪いデザインとは?(デザインの敗北を事例に)
- 08.デザインの4つの基本原則
- 09.発表するな。プレゼンをしなさい。
- 10.それっぽくなる必殺プレゼンテーションテクニック
- 11.即興プレゼン(失敗経験を作る)
- 12.ヒアリングの重要性(問題は誰も与えてくれない)
- 13.ターゲットは誰?5W2Hやペルソナ
- 14.オリジナリティーってなんだね?(パクリとモノマネ)
- 15.今から「円柱」を最低30案描け。
- 16.貧困発想からの脱却!~アイデア発想法~
- 17.誰の為のデザイン?
- 18.名刺ってな~んだ?
- 19.「初めまして」をデザインする
- 20.名刺デザインのプレゼンテーション
- 21.この程度のマーケティング用語は知っとけ
- 22.リサーチ・サーベイ・フレームワーク
- 23.500mlの水を1000円で売る方法(チームワーク)
- 24.1000円で売る為のプレゼンテーション
- 25.デザイン思考とは?
- 26.デザイン事務所とフリーランスとインハウス
- 27.「バレンタイン」をデザインする①
- 28.「バレンタイン」をデザインする②
- 29.「バレンタイン」をプレゼンテーションする
- 30.最後の授業なので伝えておくこと。
おお、さらけ出してる感があるなあ。。。面白そうなのありますか?
これらは基本的なシラバスであり、状況で内容を変化させていくのでこの通り行った事は無かったりする。昨年度は松山市さんからご依頼で、一部授業内容を変更し「ポイ捨て禁止」の看板デザインをしたりした。
なにがそうさせた?
さて、この「デザイン概論」という授業。
実は学校からのオファーでは無く、私が学校のほうに提案し、採用して頂いた経緯がある。
この「デザイン概論」を受け持つ様になったのが2021年。それまでは別枠のゲスト講師として、2年生の前期6コマで本職であるプロダクトデザインを教えていた。
そして、その授業で感じたこと。
学生の「クリエイト」や「デザイン」に対する造詣が浅く、理解度が低い。
これは学生個々の能力の問題ではない。もちろん、学校や先生方の問題でもない。
ただ、デザイン系専門学校に脈々と受け継がれてきた教育内容が素人同然の子供達を「2年」というとてつもなく短い時間の中で、「即戦力としての労働力」に仕立て上げなければならないという暗黙の制約が存在する。そのためにはPhotoshopやIllustratorといったデザイン業界必須のアプリ操作の習得や、印刷物や広報物のテクニックや用語、決まり事をメインに教えるのが一般的。これは特に地方が、と言うよりも日本全国の専門学校という枠組の中では2年という時間の制約がある以上、どうしても避けられないのが現実である。
いくら何でも、手持ちの6コマできちんと教えるには時間が足りなすぎる!
だが、そうではない専門学校が存在していることも知っていた。
根本的な考え方の違いは、「とりあえずオペレーターとして社会に出す」のか。それとも「様々な課題解決できうるクリエイターを社会に出す」のかの違いである。2年という制約の中で、なんちゃってでも「即戦力」にするためには、本来クリエイターが身につけなければならない思考や分析、知識などを端折ってしまわなければ到底追いつかない。しかも彼らはまだ未熟な1年生の冬には就活が始まってしまう。
ご存じの方も多いかと思うが、どこの専門学校だとしても非常勤に対するフィーは決して高額とは言えない。
フィーの対象は授業時間が対象となり、その準備として、学生のことや授業内容を考えたり、資料を作ったりと言った時間は一切の手弁当になるという状態。はっきり言って非常勤やってるうまみは「お金」には無い。
じゃあ、その面白い授業とやらを山田先生はなんでそんなことやってるのか?
確かにビジネスとしては正直どうかと思う。決して儲かりもしない。
有能なクリエイターが愛媛にいたとて、彼らが愛媛のデザイン教育に手を出すことはまず無いようである。
(実は私が知らないだけで過去にやってみて辞めちゃったのかもしれない)
儲からないけど教えてる「2つの理由」
私はそこに2つの理由を見出している。
1つ目は「私個人の好奇心と学び」、そして2つ目は「地方ビジネスへの危機感」
1)私個人の好奇心と学び
これはシンプル。各種資料や調査結果ではなく、直接肌感覚として18歳から20代前半の若者の「今」に触れられるのは大きいのだ。クリエイターは年齢と共に必ず陳腐化していく。
その中で自分に近い世代や上の世代へのリーチは難しくないのだが、この若い世代へのリーチが実は恐ろしく遠くなっていく。この現実から目を背けるクリエイターは多い。彼ら世代をまとめて「Z世代」と呼ぶようなセンスではそこにある筈の共鳴的な「わかりみしかない」事ですら遠くから眺め、手持ちの過去のものさしで測り予測するしかない。直接接してみなければそこにリアリティーは無い。
とは言え、そういう私は未だに「エモい」ですらが肌感覚としてスッと入ってきてなかったりするのだが。。。。笑
2)地方ビジネスへの危機感
愛媛にJターンして5年。すっかり関西弁もでなくなり、完全に松山人として溶け込んでる私だが、愛媛に戻ってくる前からJターン移住した場合、私に一体何ができるのかを自問していた。その中で感じていた課題が、何処の地方でもあるあるの「デザインリテラシーの低さ」である。
そこで、私が培ってきた「デザイン」という経営やビジネスにとって有能なツールを愛媛に還元することで、地方の創造力、生産力、イノベーション、スタートアップなどを底上げしたいという考えにたどり着いた。
これはたてヨコ愛媛の感度高い方々なら誰しもたどり着く1つの仮説。
その解像度は別にしても肌感覚として感じている人は多いんじゃないだろうか?
Jターンして直ぐにこの「デザインリテラシーをドラスティックに変化させないと地方はまずいことになる」という仮説があながち間違えでは無い事を確信した。そこで県内デザイン団体の代表に就任したりしながら、県内のクリエイターに対して、アナウンスをし、その意識改革に勤しんだ。
しかし結果はと言うと何も変えることはできなかった。コロナ禍の影響と私の人望の無さもあり、仕掛けようとしたクリエイターの改革は水疱となる。
※私の跡を継いでくれた現代表や運営陣が変革に対しアグレッシブに行動しているのには頭が下がる思い。素晴らしいし、応援している。
そんな経験をした結果、私の中での解決策は「今のクリエイター達の意識改革」ではなく、「これからのクリエイター達の意識改革」のほうが確実で最善なのではないか?とたどり着くことになる。
そう。
県内には残念ながら「デザイン」を学問として教える教育機関は存在しない。デザイン思考というキーワードを基に、愛媛大学や松山大学の経営や経済学部中心に産学連携などにおいて、絶対に必要不可欠であり、都会や地方に限らず先進的な大学は既に活用・運用済みなのだが、これまた愛媛大学や松山大学、その他の県内大学に対して人望も人脈もない私には残念ながら声は掛からず。情けない限りである。
唯一、私の話をきちんと聞いてくれたのが今の専門学校。「デザインの本質を教える授業を1教科増やしてくれ!」という提案に繫がることになった。ただのよくわからないデザイナーが提案したこんな事を教頭先生をはじめ、様々な先生、関係者の方々のご尽力あって、実際の授業として取り入れられた。この件の関係者全ての方々には感謝でしかない。
必要不可欠な学生の意識改革
では風の噂で「評判が良い」と言われる私の授業は?というと、上記のシラバスの内容なのだが、私が24年講師として学生達と対峙してきた中でずっと一貫して初回授業で学生に伝えてきたことが4つ有る。
- 「絶対に損はさせない」
- 「考えることをさぼるな」
- 「もう教えてくれない、自ら学べ」
- 「頑張ってるやつが格好いい」
「絶対に損はさせない」
「まあ、騙されたと思って真面目に俺の授業を聞いてご覧。全体に損はさせないから」と宣言している。
それだけの内容を伝えてる自負もあるし、自分へのプレッシャーでもある。
なにより、これを言われて学生自身がワクワクしない訳がない。
「考えることをさぼるな」
今、インターネットでほぼ解を見つけられる。と思ってる人がほとんどではないだろうか?その結果なにが起きてるかというと、その解が本当に正しいのかどうかも考えず、盲目的にそれを自分の解として世の中に発表しちゃう。世の中のコンテンツがつまらないのは間違いなくこれが理由だ。地方において都会の真似をしてオリジナリティーが保てたのは、インターネット前。未だにテレビや都会のモノマネをして考えた気になってるマインドから脱却させる必要がある。
「もう教えてくれない、自ら学べ」
考えてみてほしい。学生時代はやれ英単語覚えてこいだの、太宰治の気持ちを100文字で答えろだの、常に先生が設問し、その解が正しいかどうかを判断してくれた。でも、社会に出てから戸惑ったのは私だけじゃ無いはず。社会では基本誰も設問をしてくれない。ましてや正解かどうかなんて誰も担保してくれない。大人達はみんな大なり小なり仕事や人生を自分で設問し、沢山のアイデアの中から、自分なりの解を見つけるはずだ。18歳の彼らにはこのマインドシフトが重要だと考える。
「頑張ってるやつが格好いい」
これは私が特に南予出身だからかもしれない。出る杭は討たれる。目立つやつは妬まれる。そしてなぜか、頑張ってる奴はダサくて、頑張ってない奴が格好いいという風潮が生まれる。社会ではそんなことは一切通じないのは今更説明の必要も無いだろう。特に専門学校でこれから戦う知識を得無ければならない彼らに、頑張らない選択はもう無いのだ。
そして、私は最初の授業はお決まりのフレーズになる。
私はこの2年、学生にとって期待に満ちあふれた専門学校入学後1回目の授業、初っぱなの先生を勤めた。開幕投手みたいなもんかもしれない。(特に誉れは無いけど、そうなのか?(^^ゞ)
そんなキラキラした目、隣の人の名前もまだ知らない、初々しく希望に満ちた教室でまず言い放つ。
「この中で、クリエイターになれるの1割くらいだからね」と。
約40人ほどのクラスだから、1学年4人程度。
「ただし! このクラスが頑張る奴を邪魔せず、負けじと頑張れる空気を持ったら、倍の2割だな」
実際にクラスの雰囲気で8人程度になったりすることもある。その逆も然りだが。
「と、言うことはだな。このクラスで上位数人に入ってないと君らはクリエイターになれないわけだ。そして残念ながらこの中でTOPのレベルなんて、都会に行けばいくらでもいるから」・・・・
まあ、この段階で「キラキラ&ほわ~ん」としていたクラスの空気は一気に「ピキーン」ってなる。笑
それはそう、専門学校に入ったら誰しもみんなクリエイターになれると思って、今日、初めての授業に臨んでるはずなのだから。でも、それは現実的にそんなもんなのだよ。
そして満面の笑顔で最後に付け加える。
「デザイナーやクリエイターの仕事って、すっげー楽しいぞ。😏」と。
じゃあ、彼らが2年間をどう過ごさないといけないのは言うまでもないはず。
さて、私はあなたに何を伝えられるのか?
私がこうして教えた初めての学年がこの春、社会に巣立っていく。私が言うのも何だが、彼らはきっと数年後のこの地方都市を変えていくはずだ。2023年、愛媛のデザイン界にとって、ビジネス界にとって、大きな変革に繫がる第一歩かもしれない。
さあ、次は社会人の番かな?
前々からリクエスト頂いている、発想法やプレゼンテクニック、プレゼン資料のデザイン、デザイン思考、製品やサービス開発などのセミナーを行わないと、完全にヤルヤル詐欺で学生に偉そうに言えた立場ではなくなっている。もうコロナを言い訳にできなくなったしね。
ここまでこの稚拙な文章を読んでくれたあなたに質問。
5月頃にセミナーするとして、なにから始めましょうかね?