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たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

スタートアップビジネス

愛媛での活動報告と、10年間地域発スタートアップでの学び共有

皆様初めまして。生駒祐一(45歳)と申します。

  • 自己紹介
  • 愛媛での活動報告(BLAST SETOUCHIでの新たな出会い)
  • 地域スタートアップでの学び共有(SETOUCHIでスタートアップを目指す方々へ)

■自己紹介

 愛媛県の「トライアングル愛媛」というデジタル化プロジェクトに参画した今年6月に愛媛に来て、毎月定期的に来るようになりました。今までは宇和島、大洲、野村町、松山と、主に西側を回ることが多かったのですが、プロジェクトも社員が主導的に回し始めたので、年明けから東側も行ってみたいと思います。

 会社では「農業のデジタル化」、個人では「未来の地域経営」というミッションに、使命感を持って取り組んでいます。地域経営では、主にsociety5.0という分野を担当し、やっぱり農業分野(農業×society5.0自治体戦略)の有識者を3年ほど勤めました。会社は2014年に創業し、9年目を迎えています。2017年に地銀ファンドから普通株/Equityでの資金調達を行い、先月までに4回のラウンドを経験しました。

農業のデジタル化やアグリテックベンチャーにご興味あれば、こちらを見て頂けたら幸いです。

 アグリテックに関わるベンチャー企業のExit(イグジット:上場やMAにより投資資金が循環した事例。投資資金が回収されることや、利益を獲得すること、事業を譲渡することなど形態は様々だが、「投資が成り立つ業界である」を定義する重要な指標)は、全国でもあまり多くはありません。

 私が知る限り、過去10年間では、和郷園(関連会社ザ・ファームがMBO)、農業総合研究所(IPO 3541 (TYO))、イーサポートリンク(IPO 2493 (TYO))、ベルグアース(IPO 1383 (TYO))、楽天農業(旧テレファーム 楽天へのM&A)、ウォーターセル(ベジタリア・三菱商事へのM&A)そして先月事業継承した穂海の7社くらいです。

 愛媛には国内事例7社の中の2社があります。国内には”アグリテックの聖地”を目指す地域は多くある中で、愛媛県は結果で”アグリテックが芽生える場”を示している地域とも解釈できます。

アグリテックベンチャーについて

https://data.wingarc.com/localdxlab-45-miyazaki-45852
https://data.wingarc.com/localdxlab-45-miyazaki-45852

農業のDX、デジタル化について

■愛媛での活動報告(BLAST SETOUCHIでの新たな出会い)

 トライアングル愛媛にてサグリさんとのコンソーシアムで採択を受け、弊社メンバーが活動を始めました。

 プロジェクトは仲間たちが推進し、私は愛媛での拠点化の可能性と、地域企業との化学反応の可能性を模索しています。私自身、大きく3つのことを始めました。一つ「毎月、数日愛媛に滞在すること」、二つ「可能なら、滞在中に松山のワークスペースで仕事すること」、三つ「イベントなどがあれば、時間が許す限り参加すること」です。松山城周辺に出没しています。

 NewsPicks坂本さんとは九州山口ベンチャーマーケットや、Newspicksのイベントでご挨拶させて頂いた機会があり、その縁からイベントを見つけては参加し、ネットワークが徐々に広がっています。

 もちろん先述のアグリテックでExitされた経験をもつ2社ともご縁を頂き、先週は楽天農業の遠藤社長はじめ皆様と、懇親を深めてきました。ベルグアースの山口さんとも定期的な接点を持たせて頂いています。

https://dx-ehime.jp/

↑トライアングル愛媛 愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト

■地域スタートアップでの学び共有(SETOUCHIでこれからスタートアップを目指す方々へ)

 私たちは2027年の上場を目指して、事業成長の階段を組み立てています。決して簡単な道ではありませんが、「上場させる」とグッと覚悟を決めたことで、創業時の「大きくジャンプして、様々な景色を観たい」を思っていた頃よりは、圧倒的に実現の精度が高まりました。

 2022年年初に「アグリテックはこのままでは総崩れになる。テラスマイルはExitの突破口を開いてほしい」という期待を国関係の方から頂き、「上場させる」強い使命感へと繋がりました。

 既に4回ラウンドしていますし、事業もすんなり立ち上がらなかったのでバリュエーションも高くはなく、上場させるために建てた資本政策での、私の上場により豊かになるメリットはほぼありません。私欲のない追い込まれた状況が、感情論を捨てる意思決定をさせ、数字とKPI主体への事業計画を構築しました。視座は一気に高まり、最近の頭の問いは「地球の為に、日本の未来のために、何ができる?」です。笑

 ただし、これからスタートアップを目指す方に、同じ轍は踏んでほしくはありません。労働者が打算的思考を持ったら適応障害の診断書をもらい、簡単に裁判を起こして1年分の給与がとれるのが、今の日本の労働環境です。多くの起業家が心を病み、家族や両親を不安にさせ、夢や志を諦めてしまった史実もあります。

沢山の失敗をしてきた経験者から4つの短冊を駆けさせていただきます。

  • 時流(追い風)はいずれ必ず来ると信じる(準備が人生の分かれ道)
  • 感情の通った身近な友人ではなく、出来る限りプロの意見と向き合う
  • 覇気をまとえば、空気と経済の流れを動かすことができる(覇気スイッチ)
  • 「なんでこの人雇用したの?」は気にするな。確率は「2割×時流」。

時流(追い風)はいずれ必ず来ると信じる(その時に準備できているかが人生の分かれ道)

 もし、自身が選択したビジネスが、しっかりと考え抜かれているなら、カッチリとハマらないとしても、近いところに追い風は必ず来ます。選択したビジネスによっては、数回来るかもしれません。

 重要なことは、その時流の波・流れに乗るひと・もの・かねの準備ができているかどうかです。私の母校であるグロービス経営大学院では、これを「志を支えるスキル・マインド・人的ネットワーク」と定義していました。

 共通性が高いものほど、競争戦略とビジネスモデル、シナリオが重要になり、地域特性(業界特性)が高いものほど、プロフェッショナルが求められます。恩師はプロフェッショナルを「現場・修羅場10,000時間」と定量的に設定していました。

 今、私たちも「農業DX」の農林水産省の事例企業となり、現場をリードし続けるための組織構築(特に中間層の育成)が鍵となっています。時流の波や流れが来たとき、加速できる準備を進めてください。

■感情の通った身近な友人ではなく、出来る限りプロの意見と向き合う

 私が最も失敗を重ねた部分がここだと振り返ります。身近な友人は心地よいですが、決して成長の距離を縮める経験値は積み重ねられません。逆に自分と近い責任が発生した時、経営者にとっては「被害者という名の加害者」へと変貌します。経験値のない友人にアドバイスを求めた自分自身が誤っていたと反省しています。

 特に、資本政策は一度間違えたら、大きな外科手術でもしない限り、取り戻せません。一番陥りやすい穴は、「金融マンは金融の専門家と思って、資本政策を相談すること」です。金融にもアセット(融資)とエクイティ(投資)は、農業と漁業、スーパーと宅配EC、野球とゴルフくらいの専門性の差があります。

アセット経験の長い方はファイナンス思考(未来志向)はなく、バリュエーションは試算できません。もちろん、起業時は資金繰りが厳しく、特に地域では「この人が手を引いたら終わる」という場面も多々あります。私のように「事業は面白いのに、資本政策で失敗したね」「なんでこんな資本政策を組んだの?」とはたかれたとしても、上場は目指せますが、史実を頭の片隅には入れておいて頂くことを若い方には望みます。

■覇気をまとえば、空気と経済の流れを動かすことができる(その覇気スイッチを是非探してほしい)

 母校の学長は、10年前から「5つの観」と発していました。5つとは、世界観、人生観、歴史観、倫理観、使命感を指します。昔は、ぼーっとカフェで「自分の5観はどうだろう?」と、経験から湧き上がるものを整理するフレームワークとして、この5観を使用していました。

 45歳になり、”自分大好き・自分認められたい”のような承認欲求と一線が引けるようになりました。「残りの人生は使命を持っていきたい」と思うようになり、国から社会課題の解決を期待されたこともあり『使命感』から、伝える言葉に重みが加わりました。

 使命感に共感いただける方がいるからこそ、強い倫理観を持って行動するようになり、考えに軸ができることで世界観と人生観が組みあがり、周りの行動や発言を歴史観という時間軸から比較・考察できるようになりました。

 発言が理にかなっていると経済に関わる方が納得すれば、自分の周りに経済の河ができ、流れが見えてきます。流れを加速させるための風として、使命と責任持って活動を伝えるようになります。これからスタートアップという未来の日本基盤を目指す方は、是非、この覇気スイッチを探ってみてください。

■「なんでこの人雇用したの?」は気にするな。確率は「2割×時流」。

 今まで100人くらいの人を採用してきました。最初の数年は自分でもタクトを振るって人事に関与していましたが、「人を見る目がない」という言葉に嫌気がさし、他の人に任せることもしました。人の紹介での採用も行いました。結果分かったことは、「他人は安全圏にいる人ほど、マウント取るために確からしいことを言う」です。大丈夫!言っている人はやってみると自分以上に何もできません。コミットしていないので、逃げるか弱気になります。不安にならず安心してください。

 社長以外は「すみません」や「分かりません」が正当化されます。特に創業時から事業が安定するまでの期間において、社長は正当化されません。結局、採用は縁とタイミングと経験値です。社長の経験値を積み重ねている、体験の引き出しを増やしていると思い、前に進んでください。

 今では弊社でも、採用のプロの方々に、書類審査やエージェントコントロールをお願いしています。「社長が言った」と後で駆け引きを持ち込まれないように、3回か4回は面談するようにしています。プロフェッショナルの方でも、「採用の成功率は3割」や「やっぱり2:6:2の法則が当てはまる」という見解もあります。もちろん、人の人生を左右することですから、雑になってはいけません。私も常に採用は真剣勝負です。

<本のご紹介>

最後に、私が創業時から事あるごとにページを開く本を紹介させてください。

星野さんは近年のスタートアップのような資本政策は選択していませんが、地域発の成長戦略を進めている経営者として、考えを参考にさせて頂いています。

初めてのコラム投稿、よろしくお願いいたします。皆様の未来への挑戦を応援しています。

テラスマイル株式会社 生駒祐一

ABOUT ME
生駒 祐一
アグリテックの企業を立ち上げて9年目になります。自治体・銀行・企業・農業者グループと組んで、農業のデータ分析を行う仕事をしています。昔、NPでは地域活性のおすすめピッカーを務めていました。得意分野は、地域発ベンチャー、資金調達経験、起業経験。月に一回(数日)、愛媛に滞在して、ミーティングの合間に、色々なところの美味しい食を食べて回りたいと思います。 グロービス経営大学院卒、ソフトバンクアカデミア(外部生)、総務省 地域情報化アドバイザー、内閣官房 地方創生society5.0有識者など。
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