Column

たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

エッセイライフスタイル

ロマンだろ。ロマン。

実は久しぶりにコラムを書く山田です。今回も唐突に書き始めます。
さてみなさん、最近「ロマン」って感じてますか?

最近、私自身が感じている違和感の原因がこの「ロマン」の欠如なのかもしれないと思ったので、その辺の整理整頓、私利私欲の為にこのコラムを利用させて頂きます。ww

今回私が導き出した1つの解は「『ロマン』とは『甘味な弱毒』ではないか?」と言う事。

そして、そのロマンは社会の合理的な成熟によって、確実に薄れていっていると言う事実。
でも、「ロマン」無き世の中は、ドキドキもワクワクも無く、本当におもしろくない。

ロマン

今更だけど、「若者の○○離れ」ってさ。

何を言い出したかと言うと、「若者の○○離れ」についてのアンケートについての疑心です
その最たる例の「若者の車離れ」で言うと、昨今のSNSやネットニュースでは「車自体が昔に比べて高いから」とか「駐車場や税金などの維持費が高い」とかが調査結果として広報され、話題になったりしてますが、私からすると、「そりゃ調査ではそう言うわな。」って感じ。

確かに賃金の上昇率から比べると、車は圧倒的に高価格化しまくり。
軽自動車で150万から200万っって無いわーって思いますよね。昔は新車で70万とかだったし、ホンダビートの販売価格が160万だった時にこぞって「高すぎる、誰が買うのか?」と言ってた位です。
そりゃ買えないなと。

でも、昔だって若者が新車を買ってなんてなかった、ボロボロの中古車を一生懸命買ってたんですよね。

旧車

「若者の車離れ」に対して私が思うのは、車の家電化による「ロマン」のロスト。

つまり、車自体が進化しすぎて、もう個人が改造したり、修理したり、もっというと道具としてある程度の練度を重ね、使いこなす達成感、それを羨望のまなざしで見られる優越感などがなくなってしまった。
自分でコントロール出来る部分が無くなってしまったんだと思うのです。コストもそのロマンをかき消す要因ではあると思います。

そう、車は「安全」を最優先することで「家電」になりました。

そりゃそうです。バブル期から比べても、交通事故死亡者の数は1/3に激減しています。
これは車メーカーの努力の賜であり、間違いなく、歓迎すべき数字です。

車、買い換えました。

先日、長年乗ってきたMINI Cooper Sを手放しました。※オイル下がりで修理代が高いっ…
ターボエンジン、スポーツ仕様の足回り、MT(マニュアルトランスミッション)でコントロールする楽しさを満喫しておりましたが、次の車の選定では市場にはもうMTで面白い車が皆無でした。今回はついにDCT(ダブルクラッチトランスミッション)とは言えATになり、ターボと言ってもダウンサイジングターボ。なにより、レーンアシストやアクセル、ブレーキの自動化など、もういたせり付くせりで未来感たっぷりの夢のような乗り物です。

そして、車に乗るという目的は完全に変わりました。私にとって車とは「A地点からB地点まで、乗りこなして楽しく移動するもの」でしたが、新しい車は「A地点からB地点まで、快適に省力で移動するもの」に変化しました。良いおっさんなので落ち着けたとも言えます。笑

人それぞれ、楽しみ方は異なります。時代によっても年齢によっても変わります。
ただ、家電製品の様になんでもかんでも快適に、楽ちんになるように自動化した結果。
私は車からロマンが無くなってしまったなと思ったのです。それは、操作においても、機械としても、持ち物としても。

企業体がカスタマーに提供するバリューに「顧客の省力化」が必ずと言っていいほど存在します。
これを購入するとこんなに「楽ちん」になる。という価値観。既存のモノ・コトを改善・改良・ブラッシュアップを繰り返すと行き着つきますし、ある意味おいて、これこそが企業の責務であり、人類の発展に寄与してきたことだと思います。

その結果、車メーカーも例外ではなく、普通は購入すら出来ず操作しきれないような一部の高級スーパーカー以外の一般車は、安全・快適・便利を追求した結果、家電化してしまった。「してしまった」ではないのか。「家電化を達成した」が正解の言い方かもしれません。

きっと、「若者の○○離れ」をどれだけインタビューし、アンケートを取って分析したとて、「ロマンの欠如」という回答は絶対に得られないでしょう。なぜなら、そこには人間本来の欲望である「楽ちんになる」というバリューを達成しているからです。

結局、「ロマン」ってなんだと思う?

カクテル

『ロマン』とは『甘味な弱毒』ではないか?」と私は思ったとこのコラムの序盤に伝えました

この「ロマン」と言う言葉を調べてみると、一般的に「ロマン」は男性に向けて、「ロマンス」や「ロマンチック」は女性に向けて発せられることが多い言葉として定着し、その語源はフランスの「ロマンス語で書かれた小説」を意味するらしいのだが、そもそも「ロマンス語」とやらがわからないので、ここはそっとしておきます。※ロマンス語は今のヨーロッパ各国の言語の元になった言語。らしい。

  1. 空想的、冒険的、伝奇的な要素の強い物語。
  2. 感情的、理想的に物事をとらえること。
  3. 夢や冒険などへの強いあこがれをもつこと。

辞書を紐解くとこう記載されていますが、つまりはやはり「非合理的ではあるが、ドキドキワクワクする事象」と言い換えるほうがなんだかしっくりくる気がします。

つまり、「非合理的ではあるが、ドキドキワクワクする事象」の言い換えとして「甘味な弱毒」というネチっこく、ちょっとエロチックであり、若干紫色をまとった単語に落とし込んだ訳です。

そして、物事が成熟しつつある人類の文化の中ではこの「甘味な弱毒」は許容されなくなってきています。メディアにおける言語や表現の自己規制から始まる社会全体を真綿で締め上げている現状。無法地帯だったYoutubeすらこの真綿にからみ取られてきてる模様。
きっといつか、「車を自分で運転してドライブ? バカかそんな野蛮な! 事故を起こしたらどうするの? 自動運転にしなさい!」なんて日が直ぐ近くまで来てる気がしているのです。

成熟による、ロマンの粛正

人類の文明が成熟していくとして、そこには本当に幸せな人生が待っているのでしょうか?
私はふと自分に問いかけることがあります。
私はプロダクトデザイナーであり、人類文明の屋台骨である工業製品を生み出し、世の中に数多有る「不平・不満・不思議・不平等」を解決するために奔走している自負があります。

だが、人の「楽したい!」という欲求を全てかなえた先になにがあるというのでしょう?
ロボットが完全に業務をこなし、人間から労働が無くなったとして、そこに笑顔はあるのでしょうか?
あなたは幸せになるのでしょうか?

ロボット

私はそこにはロマンを感じません。
完全なるオートマチックであり、人が毎日を働く必要がなく生きる地球。
これは、もう人間がロボットに「飼われている」に近いかもしれない。

便利になる生活の総家電化は、実はそこにあった「ロマン」を粛正してしまうことになるのでは?
そして物事から人心が離れていくのはそこにロマンを感じられなくなるからでは?
昨今のテレビ離れも、選挙の投票率低下も、若者だけじゃ無く、人々が既存の事柄からどんどん興味を失っているのは、正義と言う名のコンテンツの浄化と同時にロマンの粛正が進んだ結果なのではないでしょうか?

私は一縷の「甘味な弱毒」を社会に存在させたい。ペニシリンや血清がそうであるように。
猛毒ではない、致死量でもない。ざらざらとした触感。
ロマン無き世の何処に人を魅了するなにかがあると言うのでしょうか?
出木杉君よりものび太の方がロマンがあるから、しずかちゃんはきっとのび太を選んだんじゃないかな。

月に100Km走る必要なんてなにもない。競技自転車で坂道を登る必要も無い。サウナで整う必要も無い。ジムで身体を動かす必要も、1人でキャンプしたり、山で珈琲入れたり、哲学を語り合ったり、急にウインドサーフィントライしたり。そこに合理的な理由なんて一切ない。あるのはロマンと言う名の「甘味な弱毒」があるだけ。それだけで、いやそれ故に、人は日々を楽しめるのだと思うのです。

「ロマン」が溢れるたてヨコ愛媛

たてヨコ愛媛には「ロマン」が溢れています。どんな事象も黎明期はロマンが溢れているものです。地方におけるこうしたコミュニティは、まだ誰もが暗中模索しながら分かり易いベクトルをもって、革新、改善していく。そこに「ロマン」を感じるものなのです。
ですが、その「ロマン」は継続・持続の中で完成体とされる理想に近づくにつれ、確実に薄れていくのも真実。人はどうしても「合理的で効率がいい」ことを選び、それを繰り返したがる。誰でも基本は面倒くさがりで、楽する事を学ぶから。

ならば受け身のまま、今感じているロマンの目減りを眺めながら、ロマンを消費していくのですか?
それとも、あなた自身が誰かにとっての「ロマン」になってみますか?


面白き事もなき世を面白く すみなすものは心なりけり。
高杉晋作の言葉に後半、野村望東尼が付け足した言葉。
面白くない世の中でも、面白くできるかどうか。結局のところ、自分の心持ち一つ。


ロマンだろ、ロマン。そこにロマンはあるのかい?
仕事にも遊びにも。

私は「甘味な弱毒」を欲しているのです。

ABOUT ME
山田 敬宏
大学卒業後、メーカー・デザイン事務所勤務を経て、1999年「有限会社リプル・エフェクト(西宮市)」、2017年「株式会社リプルエフェクト(松山市)」を設立。東京・大阪・愛媛の大小様々な企業の製品開発やブランディング、デザイン、ビジネス創出など、デザインコンサルティングとして「0 to1」業務のブレインを担当。 国内をはじめ、世界3大デザイン賞やビジネスコンテストのグランプリなどを多数受賞。 その他、大学や専門学校での講師や起業イベントなどでのメンター・コーチング、製品開発系のセミナーなども行う。 ビジネス デザイナー / デザイン ディレクター / 製品開発・プロダクト デザイナー / UX・UIデザイナー
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