Column

たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

マーケティング事業

マーケターとして祭文化に貢献する

本記事が初めてコラム執筆となります(株)エフアイシーシーの伊藤里加子です。たてヨコアカデミアの第6回で「地域文化学」をテーマにお話させていただきました。

突然ですが皆さん、お祭は好きですか?

祭と聞くと、立ち並ぶ屋台、お腹が空いてくる美味しそうな香り、たくさんの人の熱気、花火、そして勇壮なお神輿などの風景が目に浮かぶと思います。一方で、少し怖い印象を持っている人もいるかもしれません。

私は、祭が大好きです。全国各地にある地域の祭は、日本の宝物です。誇り高く、次世代につなげたい伝統文化だと心から思っています。

もともとは、ただ地元の新居浜太鼓祭りが好きな女の子で、ここまで祭の価値について考えたこともありませんでしたが、知れば知るほど好きになり、どんどん祭の世界にハマっています。今では会社をあげて祭のプロジェクトに取り組み、毎日祭のことを考えるようになりました。

今回のコラムでも、祭への愛について語り、みなさまに祭に興味を持っていただけるようなお話をお伝えしたいところですが、その前にあなたは誰ですか状態だと思うので、まずは自己紹介から始めようと思います。

伊藤里加子とは、何者なのか?

なぜ、祭について情熱的に活動するようになったのか?

について、書きたいと思います。

少しでも共感できるところがあれば、お友達になっていただけると嬉しいです(笑)

社会に価値を届けるマーケターになりたい

生まれは愛媛県新居浜市で、愛媛大学理学部化学科を卒業。就職を機に愛媛を離れ、関西に出ました。

最初の就職先は株式会社ミルボンでした。学んだ化学を活かせるフィールドでかつ自分がワクワクできる環境を探し、化粧品業界に出会い、華やかな業界と先輩への憧れで入社を決めました。入社したときには憧れの先輩は退職してしまっていましたが、営業部での怒涛の日々を経て、商品企画部でグローバルブランドの商品販促を担当し、海外出張など世界の美容業界を相手にお仕事をしていました。

キラキラした世界で、泥臭くマーケティングについて学んでいた時のこと、外部セミナーを受講しました。そこで聞いた「マーケターは社会に価値を届ける存在」という言葉がやけに残り、私は社会に対して何の価値を届けるマーケターになりたいんだ?という問いが生まれました。しかし、この時は目の前の仕事に追われ、社会情勢に目も向けられず、社会への価値と聞いてもいまいちピンときていませんでした。

「私は人生をかけて美容のプロになりたいわけではない。でも社会に何の価値を伝えたいのかも分からない。ただ、いつか社会に価値があると本気で思うものに出会えた時、その道で貢献できるようにマーケティングの知識を深めたい。」

私は、このセミナーの帰り道に転職を決めていました。

今思えば、なんという無鉄砲さ。直感のみを信じて人生を変えた昔の自分にはあっぱれです。本気でマーケターという仕事に可能性と希望を感じ、同時に社会への知識の無さを痛感したことを覚えています。

転職先は、ブランドマーケティングエージェンシー・株式会社エフアイシーシーです。簡単に言えば「デジタルに強い広告代理店」。私の経験と視点、マーケティングを学びたいという熱意も伝わり、京都オフィスのプロデューサーとして働き始めました。

約3年経験を積んだ今は、チョコレートが強いお菓子メーカーさんの商品販促のためのリサーチやデジタル広告の運用や、女性ファッションブランドのブランディング支援、コンタクトレンズメーカーのCRMプロジェクト、エンタメメディアのSNS戦略の構築などを担当しています。

1日の中で、1〜2時間ごとに頭を切り替えて、様々なブランドの未来を作るためのブランディング戦略やマーティング戦略、戦術について考える日々。最近では、SDGsへのアクションをどうブランディングに活かすかという相談も増えてきました。

クライアントワークを通して、マーケティングやブランディングについての知識と経験を積んでいます。

また、2年前から一般社団法人サステナブル・ビジネスハブ(SBH)に所属し、アシスタントプロデューサーを務めています。ジョインしたのは、マーケティングについて知識が増え、自分のスキルが増えてきた頃です。

「このスキルを活用して社会貢献したい!」

やっと転職時に掲げたことが実現できるかもしれないと感じ、活動先を探していた時に、知人の紹介で理事の方と出会い、SBHのビジョンに強烈に共感して所属を決めました。

要は、日本が培ってきた伝統文化のエッセンスを現代社会に活かそう、という思想で活動している団体です。

日本文化に興味関心があり、SDGsにもアンテナをはっていた私は、一目惚れしました。

学生時代、歴史が一番苦手で「過去は振り返らない主義なので」とか適当なことを言って、日本史の暗記から逃げていた子が日本の伝統文化にワクワクするなんて、おかしな話ですが、その背景には日本人として情けなく恥ずかしい想いをした経験が原体験としてあります。

日本人なのに日本のことを知らない

話は、愛媛大学生時代に遡ります。

大学4年生のとき、研究室の教授に頭を下げてお願いし、1ヶ月間ニューヨークに留学に行きました。これが生まれて初めての海外渡航です。飛行機で水をもらうことにさえ苦労しながら、無事に辿り着き、語学学校に通いました。

そこで同じクラスになったスペイン人の女の子からの質問。

What is favorite point of Japan?

ーあなたが日本のどんなところが好き?

彼女は、一度も日本に訪れたことがなく、私は人生で初めて出会った日本人。ワクワクした眼差しで私の回答を待っていました。

しかし私は、全く答えが思い浮かびませんでした。

「日本の好きなところ?いやいや、むしろ、ちょっと日本に飽きてきて、海外に出てきたし。好きなところなんて無いかも。というか外国人に日本について何の魅力を説明すれば良いんだ・・・。でも彼女はスペインの好きなところを話してくれたし、日本のことを知りたがっている。何も返さないのは失礼すぎる。」

心の中で自問自答を繰り返し、絞り出した答えは「新居浜太鼓祭りが好き。

たまたま大学の英語研究授業で地元の魅力をプレゼンした経験があったのでなんとか話すことができましたが、英語で話せる内容なんてペラッペラです。彼女は少しだけ私に向かって微笑んで別の国の子に話しかける背中をみて、とても情けなく、恥ずかしい思いをしました。

私が日本について関心を持っていなかったばかりに、彼女が日本を知る貴重なチャンスを台無しにしてしまったのです。そして、何より好きだった新居浜太鼓祭りについても十分に伝えられないことを悔しく思いました。

帰国後は、とにかく日本について知りたい一心で機会を探しました。

道後の大和屋本店でバイトし、畳での作法、食事の作法、日本の食材や料理について学び、塩屋呉服店さんでもバイトし、浴衣や着物の着方や違いについて学びました。地元の祭についても改めて調べました。

自分が知らなかった世界が拓けていくのは楽しいもので、友達に語れることが増え「知らなかった!」というリアクションが嬉しくて。

気づけば海外への憧れから一転し、日本文化が面白くなり、祭に参加するなど日本文化に触れることが生きがいになっていました。

だからこそ、SBHの掲げるビジョンで、日本の伝統文化を現代社会に活かそうとしていることに心を躍らせたのだと思います。

音もなく消えていく祭を無くしたい

「祭が無くなっている地域が増えている。地元の人だけではどうにもできず、そのまま無くなってしまう。でもそれは悲しいから地域の祭を応援する活動をしているんだよね。」

約2年前、日本全国の祭礼支援を事業とする一般社団法人明日襷の代表・宮田氏と出会い、このような話を聞きました。私の心の中は、ざわつきました。

大好きな祭が無くなる日が来るなんて考えたこともなかったし、日本に住むほとんどの人が知らない場所で知らないまま無くなっている祭があることに、すごくモヤモヤしました。

「誰かにとって大切な祭が消えていくなんて絶対に悲しい。このままではいけない。自分も何か貢献したい。」

そう思い、FICCのメンバーに声をかけ、宮田氏と対話を重ね、立ち上がったプロジェクトが「祭エンジン」です。祭エンジンついては2021年5月のたてヨコアカデミアにて「地域文化学」というテーマでお話させていただきました。

祭エンジンでは、本気で祭に取り組む人に取材し、記事や動画にして名産品と共に情報発信しています。その熱い想いが、テクノロジーの力で遠くにいる方にも届き、その地域を応援したい人と地域の祭を担う人と新たなご縁が生まれ始めています。

「地域の人だけで守れないのなら日本の皆で守れば良い。」

これは立ち上げ時に宮田氏が言っていた言葉です。日本全国、世界など、遠い場所からエネルギーを送ってでも守るべき宝物のような文化が日本の地域には残っています。これを私たちの世代で途絶えさせず、次世代を担う子供たちにもつなぎ、素晴らしい祭文化と共にのびのびと育って欲しい。そう心から思います。

最近は、いつも通りの祭ができなくて寂しい日が続いていますが、祭エンジンプロジェクトを通して、高校生や大学生などの若い子たちが興味を持ってくれたり、同世代の女の子と出会えたり、海外から日本の祭をに想いを寄せる外国人とオンラインでつながれたり、たくさんの仲間が集まってきました。

仲間たちと多様な視点から祭について考えることで、最初の「祭は楽しいから好き」という感情から発展し、今や日本人皆が注目すべき叡智が詰まった文化とまで思うようになりました。「個の時代」と言われる今こそ、人との繋がりや地縁、先人の知恵から学ぶことは本当にたくさんあります。

そして今、私が感じている祭文化の価値を世の中に届けていくことが、今回の人生の使命だと感じるようになりました。

やっと、かつての私が探していた「本当に社会に伝えたい価値あるもの」が見つかりました。

これからも自分のスキルを祭に還元し、日本の宝物が次世代の子供達にも届けられるよう活動を続けて参ります。

(限界集落といわれる宮城県石巻市雄勝町で代々、伝統の神楽を守る上山家のお母さんと)

最後に

今日のコラムでは、私が何者なのか、なぜこんなにも祭に情熱的なのかについて、書かせていただきました。

祭の魅力、価値って具体的に何なの?という点については今回伝えられなかったので、今後は私が全国各地の仲間たちと活動しながら発見した祭の価値について書いていきたいと思います。

すでに祭が好きな方、これまで縁遠かったけど実は興味がある方、ちょっと苦手だなと思っている方にも、たてヨココラムを通して祭文化の価値が一つでも伝わったら嬉しく思います。

最後にちょっと宣伝させてください。

12/2(木)19:30〜21:00で、SBHの理事、明日襷の宮田氏と共にオンラインセミナーで祭の価値について話します。

祭の価値って何なんだろう?と興味を持ってくださった方がいましたら、ぜひご参加ください。

▼詳しくはこちら

https://sbh2021-04.peatix.com/

※お友達クーポンは「vano31」です

ABOUT ME
伊藤 里加子
愛媛県立新居浜西高校卒業後、愛媛大学理学部化学科に入学。チアリーディング部TRUSTARSに所属し、笑顔のチカラ、誰かを応援することで感じる充実感の虜になりました。 卒業後、2014年に美容メーカーに入社し、営業と商品企画を経験後、東京本社のデジタルマーケティング会社FICCに入社。 現在は、京都オフィスのプロデューサーとして、企業のマーケティング戦略からプロモーション実行までを担当しています。2020年2月からフルリモート勤務中で現在は茨城県に住んでいます。 同時期から一般社団法人サステナブルビジネスハブにジョインし、日本文化の要素をSDGs推進に取り入れ、企業のCSV経営支援を目的とした活動に取り組んでいます。主な活動は、オンラインコミュニティ作りや、オンラインセミナーの運営、コーポレートサイトの運用など。 また、一般社団法人明日襷の新規事業立ち上げ支援として、各地域の祭の存続を目的にした”祭エンジン”というECプラットフォームを構築しました。 地域の祭が音もなく消えゆく現代。新居浜太鼓祭りは、生まれた時から見てきた当たり前の風景で大好きな地元の文化です。新居浜っ子で良かったと思えるのも祭があったからかもしれません。そんな誰かにとって大切な祭が無くなるなんて信じられませんでした。 祭を通して、人とつながる喜びや、地域の自然と食文化の豊かさなどを学び、人生の糧となっています。 この日本特有の豊かさを感じられる祭文化を一つでも多く次世代につなぐために、を、人生のテーマとして取り組んでみようと思っています! よろしくお願い致します。
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