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たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

テクニカルエッセイ

伝熱の三形態とたてヨコ愛媛

今回は私の専門分野である「伝熱学」について少しだけ触れてみたいと思います。※根気よく読んでください!

(1) 熱伝導

まず皆さん、熱が伝わるパターン3つあるということを知っておいてください。中でも一番分かりやすいのが、熱伝導といわれるものです。熱伝導とは、例えばお鍋や金属を加熱すると熱くなる状況を想像してください。

ここで以下のクイズを見てください。AからHまでのうち、どれかを握らないといけない場合、どれを握りますか?※こんなシチュエーションねえよ!というつっこみはなしね。

多分、5歳の子供でも、もしかしたら動物でもわかるかもしれませんね。Eが一番安全でしょうね。

このように熱いものから材料そのものを通じてダイレクトに熱が伝わる現象が、熱伝導です。その際に、感覚的にお分かりのように、温度は低いほうが安全、距離は離れてるほうが安全、熱が伝わりにくそうな材質が安全、ということになります。

これをアカデミックに表現するとこうなります。

これをフーリエの法則といいます。

では、百獣の王ライオンさん:移動する熱の量”の大きさを左右するのはどんな動物たちなのでしょうか?

この熱伝導の場合ポイントは“(ぞうさん-ぺんぎんさん)÷ぱんださん:温度勾配”で、これによってライオンさんの大きさが左右されます。温度勾配とは温度の傾きで、単なる温度差ではなくそこに距離のファクタが入ります。上の例でいえば同じ温度差であっても距離が短いほうが熱がたくさん伝わり、長ければ伝わりにくいということです。※実際の式には向きの概念が入りマイナスがつきますが、ここでは省きます。

“うさぎさん:熱伝導率”もライオンさんの大きさを決めるファクタですが、これは物性値と言われその物質固有の値になります。これは感覚的にわかりますよね。下の表で上段ほど熱が伝わりやすい物質、下段は伝わりにくいものです。そうです、空気(気体または真空など)は非常に熱を伝えにくいことがわかりますね。真空魔法瓶とか、羽毛布団などもこの原理ですね。

そして、この熱伝導ですが、熱のキャリア(運び手)は材料そのもの。もっといえば、材料の中の分子運動ということになります。分子というつぶつぶが、カチンコチンとぶつかり合いながら熱を伝えているイメージですね。

(2) 対流熱伝達

皆さん、ついてきていますか!続きまして対流熱伝達という伝熱形態についてお話しします。

風が吹いたら涼しい、流れるお湯で手を洗うと温かい、というシチュエーションがそれにあたります。この対流熱伝達の場合、「流」という文字があることからわかるように、熱のキャリアは「流体」です。先ほどの例では、流れる風(空気)だったり、流れるお湯だったり、流れがあるというのがポイントです。

これも理論式にすると以下のようになります。

ニュートンの冷却法則と呼んだりしますが、式自体はとてもシンプルです。先ほどは温度勾配でしたが、今後は「温度差」ゾウさん-ペンギンさん”、でOKです。暑い日に扇風機で35℃の温風を浴びてもあまり涼しくないですが、25℃の冷風であればとても涼しいでしょう。ライオンさんの大きさ=伝熱量は体温と流体の温度差に比例します。

そして、“ねずみさん:熱伝達係数“は厳密にいえばすごく複雑で奥が深いのですが、流体のスピードと物性に影響するとここではシンプルに考えていただければいいと思います。

まず、流体の速度が大きいほど“ねずみさん:熱伝達係数“は大きいです。そよ風と強風では強風のほうが涼しいですよね。また水と空気であれば水のほうが“ねずみさん:熱伝達係数“は数百倍大きくなるでしょう。サウナのように100℃の空気を受けても何とかなりますが、100℃の熱湯を浴びればひとたまりもありません。

(3) 輻射

そして三つ目は、輻射と言われる伝熱形態です。難しい漢字ですが「ふくしゃ」と読みます。

ストーブにあたったり、日向ぼっこしたりすると暖かい、という状況がこれにあたります。ストーブにしても、太陽にしても直接熱源に触れているわけではないですし、その間に流れ(流体)があるわけでもないのに熱を受けることができますよね。

この場合の熱のキャリアは「電磁波」なんです。目に見える光(可視光)も電磁波ですが、赤外線ヒータとか電子レンジなど目に見えない電磁波も含まれます。この電磁波は空中だろうが宇宙空間だろうが移動することができるんですね。

例によって理論式にすると以下の通りです。

これはなにやら複雑そうですね…。

理論を確立した二人の名をとってステファン・ボルツマンの法則と呼びますが、これはなかなかとっつきにくいですね。ポイントは、高温物体と低温物体の「温度の4乗の差」に比例するという点です。“ゾウさんの4乗-ペンギンさんの4乗”ですね。そして、距離が式中に出てきません。例えば太陽と地球。両者の距離は1.5億kmほど離れていますが、それは式中にはありませんので、無関係ということになります。太陽の温度は6,000Kくらい、地球は300Kくらい(K:ケルビン絶対温度です)。これが4乗で効くのですからとてつもない数字になります。熱源の温度が大きいほど大きい、しかも4乗で効くということです。

“ワンちゃん:ステファン・ボルツマン定数”は、理論的に導き出された定数であまり深く考える必要はありませんが、5,6,7,8と並んでいるのがなんとも美しいと思いませんか?!

“コアラさんは放射率”と言いますが大変面白く、黒い物体であれば1に近づき、白い物体は0に近づきます。確かに夏場に黒いシャツを着ると熱(電磁波)を吸収して暑いため、白いシャツを着てこれを反射させますよね。

最後に何と言っても重要なのが、“キリンさん:形態係数“です。下の例で赤い球が熱源で、オレンジの物体で熱を受けるとしましょう。左の場合、オレンジの物体から見ると赤い球を100%包んでいますので、形態係数は1となります。“私にとってあなたがすべて”という状態は形態係数が1ということですね。

一方、右のケースではどうでしょう、オレンジの板にとっての赤い球の存在はせいぜい10%とか20%とかでしょうから、形態係数は0.1~0.2とかになります。

先ほどの太陽と地球の例もそうで、確かに距離の概念は含まれませんが、結果としてこの形態係数がすごく小さくなるということです。大空に占める太陽の面積って微々たるものですからね。

(4) まとめ

(5) 考察

伝熱学の基本に少しだけ触れましたが、伝熱学(熱力学)というのは、電磁気学、流体力学、材料力学などと共通点が多く、「連続体力学」というカテゴリにまとめることができます。熱も、電気も、流体も、力も何らかの連続体を媒体として伝播してゆくわけなのです。

こうやって考えると、人間関係にも同じ連続体力学の理論が適用できないかと考えました。

熱伝導に相当するのは、物理的な接触を伴う人間関係。家族とかペットとかとても濃厚な場合で、こうした人間関係は愛情でつながるケースでしょう。確かに熱量がダイレクトに伝わりますね。

たてヨコ愛媛のような人間関係は対流熱伝達に似ていると思いました。物理的な接触はないものの、じかに会って温度差に応じた刺激を受けることができる。その場の空気を共有することはもちろんのこと、液体を酌み交わしたほうが関係をより深めることができる点も熱伝達係数の考え方に一致します。

そして現在のコロナ禍にあっては輻射関係というべき、SNSやオンラインでの人間関係が増えてきているのではないでしょうか。物理的接触も、流体による媒介もない中人間関係を構築するには、太陽にようによほど大きな熱量を持った人でないと難しいと考えられます。そこで大事なのは感度=放射率信頼関係=形態係数ではないでしょうか。感度が高い人ほど、信頼関係がある場合ほど熱量は伝わるものですね。

たてヨコ愛媛の立ち上げ当時、1年ほどにわたり対流熱伝達によるリアル交流を重ねて信頼関係を築いてきました。その結果、輻射による伝熱形態が主流の現在になっても色々な取り組みができていると考えています。こうやって、このグループ自体の放射率と形態係数が上がっているために、オンラインから参加していただいている大多数の皆様にとっても熱が伝わりやすい環境になってるのではないかと、勝手ながら分析させていただきました。

以上、伝熱の三形態とたてヨコ愛媛の考察を終わります。ここまで読んでいただいた皆さんに感謝します!

ABOUT ME
テイト 永渕
1972年生。愛媛県に本社がある三浦工業株式会社で企画統括部に所属。機械エンジニアとして入社し、その後アメリカ駐在を9年間経験。 2019年6月に稲見さんとともにNPUG愛媛交流会をはじめ、それが今のたてヨコ愛媛の原型となる。愛媛で最も面白い人たちが集まる社会人コミュニティを作りたい。ニックネームはテイト(Tate)。
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