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たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

意外と恐いコレステロールの話

 脂質異常症は生活習慣病の代表疾患の一つです。血液をドロドロにして詰まらせてしまうため、脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。冷静に考えると、脂質異常症という言葉にピンとこない人もいるかもしれません。かつては高コレステロール血症あるいは高脂血症と言われていました。こちらの方がわかりやすいかもしれませんが、そういわれなくなったのには理由があります。脂質には中性脂肪(トリグリセライド)とコレステロールが含まれます。そしてコレステロールには善玉(HDL)と悪玉(LDL)があることが明らかになっています。図を見ればわかるように、高脂血症や高コレステロール血症は病態のごく一部しか表せていません。

 かつてコレステロールは、全部悪者であり高ければ高いほど悪いと考えられていました。しかし善玉コレステロールが発見され、それはHDLと呼ばれます。低HDLコレステロール血症もまた悪影響を及ぼすことが明らかになっています。ゆえに、これらの脂質代謝の異常をまとめて2007年から脂質異常症と呼ぶようになりました。善玉コレステロールは言葉の通りいい奴であり、コレステロールを回収してくれますので、多い方がいいです。一方悪玉コレステロールは血管にへばりついて動脈硬化を促進する悪いやつなので少ない方がいいのです。

【なぜ脂質異常症がダメなのか】

コレステロールは動脈硬化のリスク 脂質異常症は動脈硬化疾患のリスクになることが明らかになっています。アメリカの研究ではコレステロールが高い人はそうでない人に比べて1.2倍、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクが上がると報告されています。日本の研究においても、女性より男性でコレステロールが高い人はそうでない人に比べて明らかに冠動脈疾患のリスクが高かったと報告されています。脂質異常症による動脈硬化は、蓄積されることで将来的な疾患のリスクになるため、年齢も加味した上でリスク管理をする必要があります。極端な話、50歳でLDLコレステロール高値の人と80歳の人のLDLコレステロール高値の人の生涯リスクは同じではありません。当然、若い人の方が10年、20年先に重篤な合併症を発症するリスクがあるので、今から気をつけていかなければなりません。

【脂質異常症の定義】

LDLコレステロールの管理

・持病がない人はほどほどでも良い

・心筋梗塞や脳梗塞をした人はとにかく下げる!!

脂質異常症における管理目標の数値はリスクによって異なります。2022年に動脈硬化性疾患予防ガイドラインが出ましたので、そちらもご参照下さい。全部を覚える必要はありません。大きな持病がない人はそれほど厳しくコレステロール値をコントロールする必要はありませんが、特に心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがある人はより厳しくコントロールすることが求められ、このような人は基本的には低ければ低いほどいいです。もちろん、コレステロールはホルモンバランスや臓器の働きに影響するため、やせすぎている人や筋力低下の著しい高齢者では低すぎると予後を悪くする恐れもありますので、表も見ながら確認してください。私のところに来ていただく方の多くは心臓の病気がありますので、外来ではとにかくLDLコレステロールは70㎎/dL以下になるようにしっかりした生活指導と薬物治療を行うことが多いです。

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より

【脂質異常症の食事療法】

脂質を摂りすぎないシンプルなコツ

・ドレッシングをノンオイルに

・料理法を変える(煮る・蒸す・グリルする)

 脂質とは油であり、その多くは食べることで体内に取り込まれます。いろんな栄養の教科書や成分表を見れば細かい推定コレステロール量は書かれています。ただそれを見て測りながら、脂質摂取のコントロールをする人はいないでしょう。そんなことができる人は脂質異常症にはなっていないとも言えます。かなりざっくりした計算ですが、脂質は必要摂取カロリーの20%までで摂取することが推奨されています。仮に1500kcalを摂取する人であれば300kcalの脂質の摂取が許されます。脂質は1gが9kcalなので、1日に摂取できる脂質は30gまでということになります。30gということは大匙2杯分です。これだけでも意外と厳しいと思いませんか。しかも、これはサラダ油やドレッシングだけの上限ではありません。脂質は、パンや卵、肉、魚などにそもそも含まれていますので、これらを加味しなければなりません。脂質は生きていくためには必要な成分であり、人間として脂質はおいしいと思うようになっているので、これに抗うのは結構大変です。バターでじゅわじゅわの高級食パン、アンチョビとニンニクの効いたアヒージョ(オリーブオイル)、マヨたっぷりのポテトサラダなど、世の中には脂質からの誘惑に満ち溢れています。とりあえず、わかりやすくできるところとして、ドレッシングは青じそなどのノンオイルのものを使う、炒めるよりも煮る・蒸すを活用して食事を作るなどがありますので、まずここから始めましょう。

【脂質異常症の運動療法】

運動を続けるシンプルなコツ

・一緒にやる

・目標を作る

・楽しむ

コレステロールを下げるための特別な運動療法というものはありません。厚生労働省から健康を維持するための運動として、歩数と習慣の指標が提示されていますので参考してください。あくまでこれは目標であり、個人差も大きいです。ぜひこれを読んでくださっている方は、1日1万歩を目指してウォーキングしてください。これは別にウォーキングじゃなくても構いません。家庭菜園やスポーツをやっている人であればそれをぜひ続けてください。続けることは一緒にやる仲間がいることと、楽しんで取り組めることが一番ですね。

ABOUT ME
藤澤 友輝
1988年香川県高松市生まれ 2013年愛媛大学医学部医学科卒業 松山市中病院にてにて研修→東京六本木の心臓専門病院にて研鑽 2021年~地元愛媛大学で循環器内科専門医として勤務中 2022年~キープウェルネス代表としても広く活動開始 資格:循環器専門医、内科認定医、心電図検定マイスター、剣道3段 初めまして。愛媛で循環器内科として勤務している藤澤といいます。医師として日々患者さんに貢献してる中で、勤務医個人としての活動の限界と自宅での健康管理の重要性を考えるようになり、キープウェルネス代表としても活動を開始しました。 経営者としてはまだまだ若輩者ですが、愛媛で何とか事業を立ち上げ、愛媛の方々の健康に貢献できればと考えております。ぜひ、ここに参画されている皆様の健康や医療に関するニーズをお聞かせいただければありがたいです。 私の持っているものであれば喜んで提供させていただきます。よろしくお願いします。
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