Column

たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

SDGsスタートアップライフスタイル事業

メンマ屋3年目。続けることで見えてくるもの。

(写真:2022年の「メンマチョ収穫大作戦」Aチーム)

みなさん、初めまして。
愛媛県西条市でメンマ製造業を行なっている山中裕加です。

建築学科を卒業して、不動産開発の企画や建築設計をしていた私が、業種も業界も違う「メンマ屋」を始めたのは2020年の春。あの世界を揺るがした新型ウイルスの登場と持ち前の楽観主義が重なって、私は一歩ずつそして着実にメンマ屋の道を歩き始めました。

今年で丸3年を迎えるメンマ事業について、メンマ屋3年目、そして地方移住4年目の等身大の目線で少しご紹介させてください。

地方創生。気づけばぬるりと地方移住。

父の故郷であり、祖父母の家がある愛媛県西条市に引っ越したのは2019年5月。

高校まで松山で育ち、大学進学のために都内へ引っ越したときには、愛媛に帰るなんてことは全く想像もしていなかった私が「地方」に興味をもったのは、神奈川県三浦市で「地方創生」の一環として行われている移住促進事業を担当したことがきっかけでした。

「地方」として一括りにされ、なんとも漠然としていて、つかみどころのない存在。その解像度を上げていくことで本質的な「地方創生」につながる地方の課題や価値を自分なりに言語化したいと思うようになりました。

2018年に個人事業主として開業し、都内のディベロッパーさん向けの企画業務を請け負う傍、無拠点で各地をゆるゆると渡り歩く遊動生活をしていた私は、「ソトモノ」としての限界を感じ、もう少し事業の軸足を地方に置いた生活を考え始めます。そんな時にご縁があったのが、西条市が地方起業を支援するために始めた「ローカルベンチャー誘致育成事業」。この事業への参加を機に、ぬるりと地方へ「移住」したのです。

住所は移したものの、当時の感覚は移住というよりまだまだ東京との二拠点生活というイメージでした。

(西条市ローカルベンチャー誘致育成事業)

ちなみに、市に提出した事業計画は、地方発のサービスやプロダクトを生むハブとなるような中長期滞在施設の運営で、昨年夏にオープンさせたパーラー〇〇の前身となるような計画です。
各地域間で人口を取り合うのではなく、人が周遊しやすい土壌をつくることで必要なスキルが分散していくのではないかという仮説のもと、地域外の人がその土地に滞在しながら、地域の人と協業し、資源を生かした新しいモノやサービスが生まれる場づくりを目指していました。

コロナ、そして「メンマチョ」の誕生

施設のための物件を探し、サービスやプロダクトの土台となる資源のリサーチを行っていた一年目。やっとお借りできそうな物件も見つかり、改装の設計などを進めていた最中に突如現れた新型コロナウイルス。施設運営は、飲食と宿泊に頼った事業計画だったため一度計画は白紙に戻ります。
まあ今タイミングじゃないってことなんだろうなあ〜と思いながらも、さてはて何で稼いでいこうかなと。

当時はまだ都内の不動産開発の企画を受託していたのでそれを継続することもできたのですが、そこでふと思うのです。
「このまま都内の仕事をしていたら私はなんのために地方にきたのだろう。」

そこで私は、その施設でつくりたかった一つのモデルとして、自分が地域外の目線で切り出した資源を活用して製品開発をしてみようと決めたのです。そうして生まれたのが、竹林と食卓をつなぐニューヒーロー「メンマチョ」です。

(メンマチョ わたしの瀬戸内レモン)
(メンマチョを載せればインスタントラーメンも香り豊かなレモンラーメンに!)

メンマチョ開発秘話(?)や食べ方を詳しく知りたい方はMakuakeのプロジェクトページをご覧ください。(※プロジェクトは終了しています)

「水の都」を支える地下水と放置林の関係

西条市といえば、「うちぬき」と呼ばれる自噴水が湧き出る水の都。
まちの至る所から湧き出し、地域の風景を特徴付ける「うちぬき」は、市内の産業を支える貴重な資源でもあります。一方で、地下水の水位低下や汚染などその持続可能性に懸念を訴える声も多く聞かれます。

水資源の劣化と地下水位の低下に関しては諸々の要因が絡む複雑な問題ではありますが、その主たる原因の一つとして、山林環境の悪化が挙げられています。この水資源の持続可能性に関連して「人工林」や「竹林」「棚田」について調べる中で、それまで遠い存在であった「山林環境」や「環境問題」は私の暮らしに関係する身近なものだと理解するようになりました。

(美しい山並みもよく見ると人工林に覆われ、山裾には爆増し続ける放置竹林が)

調べものをしていた「人工林」や「竹林」「棚田」の中で、祖父母の家の裏山にある竹林が放置されていること、また、移住後毎月参加している竹林整備団体との縁もあり、自分にとってより身近な課題として取り組める「放置竹林問題」に焦点をあてて商品開発をすることに。

(西条市を中心に竹林整備を行う「竹林をよくする会」の個性豊かな皆さま。)

メンマチョを通した「竹林整備」とは

メンマチョの原材料は、春先に食べる「タケノコ」が人間の背丈ほどに伸びた「若竹」と呼ばれるものを収穫して使用しています。子供でも参加出来る「若竹の収穫」は、危険を伴う重労働である成竹の伐採整備より効率的で、優秀な「竹林整備」です。

通常、タケノコとしての市場価値を失った若竹は地域内で食用として狭く消費される以外は健全な竹林環境を保つためその場で蹴り倒され廃棄されています。一方で、愛媛県では県の森林連合組合を中心に国産メンマの原材料として「乾タケノコ」を大手ラーメンチェーン店に出荷をしている土壌(参考リンク)がありました。

メンマチョプロジェクトではこの既存の地域内産業の更なる活用と、各団体との協業を目的とし、ワークショップの開催による若竹収穫のノウハウの伝達、地域内の教育機関と連携した環境教育、竹林の収益化の認知拡大にも取り組んでいます。

昨年は、市の社会教育の一環で地域の公民館さんと共同で「メンマチョ収穫大作戦」を開催。5月初旬に3回のワークショップを行い、市内の小学生や高校生、企業の方や市外の大学生まで総勢60名程度で楽しく収穫を行いました。

今年も収穫ワークショップを行いますのでご興味のある方は是非ご参加ください!イベントの告知は私のSNSでもUPします(Instagram)。
共同主催の方も募集していますので、自分の地域や会社で開催してみたいという方もお声掛けをお願いします!

(東南アジア感溢れる若竹収穫ワークショップの様子)
(背丈ほどに伸びたタケノコ(若竹)を収穫します)

続けることで見えてくる世界。粗利7万から粗利100万を目指して。

こうして始まったメンマチョプロジェクトの当初の目標は月の粗利7万円。つまり、小商いとして成立する事業規模を目指してスタートしました。
2021年5月に販売を開始した「メンマチョ わたしの瀬戸内レモン」に続き、翌年2022年6月には伊吹いりこの出汁をベースにした「唐辛子vsにんにく スパイシー味」と「生姜vs胡椒 コクうま味」が加わり、小売商品としては現在3種類の製造・販売を行っています。収穫から加工まで、既存のものをつなぎ合わせ、個人レベルの投資で新しいカタチをつくる一つのモデルが出来たのではないかと思います。

(メンマチョはこちらから買えます!とっても美味しいのでぜひ!!)

ちなみに、当初からのメンマチョプロジェクトの展望として、各地域で活動している事業者さんと協働して、その土地の食材とメンマを掛け合わせた「ローカルメンマ」を増やしていくというものがあります。ここまでのノウハウをベースにした商品開発と事業性を担保するための収穫製造販売フローを他地域に展開できる体制にすべく、今年は西条以外の地域でまずはトライアルをしていく予定です。こちらについてはまた別の機会に詳しく。

(メンマチョ 唐辛子vsにんにく スパイシー味)
(メンマチョ 生姜vs胡椒 コクうま味)

小売用商品の製造販売の一方で、事業をやりながら見えてきたのが「業務用」の需要。現在も小規模ながら業務用の卸をスタートしています。
メンマの市場規模は500〜1000億円(なんと!)と言われ、そのうちの99%を中国からの輸入メンマが占めています。海外の人件費や輸入にかかる諸経費の高騰と環境保全への意識の高まり。これらを背景に、業務用として卸売ができる現実的な数字が少しずつ見えてきました。

メンマのメの字も脳みそになかった4年前の私ですが、ここまでたくさんの方に助けられてメンマチョプロジェクトを継続することが出来ています。いろんな壁にぶつかりながら一つずつ超えて、また壁が見えてきて。諦めずに続けることで見えてくる世界がありました。

次3年のテーマは、リスクを取ることで見えてくるもの。

出世払いで溜め込んでいる皆さまへの恩返しのためにも、2023年は少しだけステップアップして次のステージに行ってみようと思っています。この先にどこまで夢を描けるか、それを皆さんにお見せすることが私にできる「地方創生」の形なのではないかと思います。

課題を資源に変えていく。そんな「新しい取り組み」がこれからもっと必要になってくる地方だからこそ、短期的な視野で事業を評価するのではなく、失敗を失敗として終わらせない長期的な視野で、小さくても事業を続けていくこと。そんな心持ちや環境が大切なのではないかと地方での事業開発を通して感じています。

それではこの辺で〆。読んでくださりありがとうございました!


PS

現在、「メンマチョを通して、楽しく竹林整備の輪をつなぐ」という初心に返って、「メンマチョコラボ100連戦」という企画をやっています。現在15戦目。使ってみてやってもいいよ!という事業者の皆さま、お声かけをお願いします!市外からのお問い合わせもウェルカムです。何卒よろしくお願いいたします!

ABOUT ME
山中 裕加
愛媛県松山市出身。株式会社スピークにて建築デザインや不動産企画・施設運営管理等を行った後、2018年に独立。都内でディベロッパー向けの不動産活用の企画等の業務を軸に事業を行う一方、2019年5月より西条市のローカルベンチャー誘致・育成事業への参加をきっかけに同市へ拠点を移し、商品開発や場所づくりを通してまちと人をつなぐための事業を展開する。#メンマチョ #パーラー〇〇
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