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「四国新幹線」を考えてみる

はじめまして。酒井と申します。普段は東京で生活していますが、こうして愛媛の皆さんと繋がることが出来てとても嬉しく思います。

さて、「四国新幹線」という言葉、最近街でもよく目にするのではないでしょうか。

四国に新幹線なんて無いのが当たり前だし、あってもお客さんが乗るのかどうか分からないし、まあ自分にはあまり関係ない話だし、ご意見は様々あるかと思います。今回は、四国新幹線とは一体何なのか、今どんな状況なのか、私なりに紹介させていただこうと思います。

 JR松山駅前の幟「四国の新幹線実現を目指して」

四国新幹線とは何か?

 昭和48年11月15日 運輸省告示第466号をもとに作成(関西空港経由は筆者)

新幹線とは、その名の通り時速200km以上の高速で走ることのできる鉄道のことです。本州、九州、北海道と日本各地で毎日当たり前のように走っていますが、四国には未だ走っていません。

でも、計画は昔からあります

現在、四国新幹線と一言でいうと、多くの場合は「四国新幹線」と「四国横断新幹線」の2つの計画路線のことを指す場合が多いです。このうち四国新幹線は、大阪市から海を越えて四国に入り、徳島市、高松市、松山市を経由して、さらに海を越えて九州へと延びるルート。四国横断新幹線は、岡山市から瀬戸大橋を渡って四国に入り、高知市へと向かうルートです。

なぜ四国には新幹線が走っていないのか?

 大鳴門橋(道路の下は新幹線用のスペースになっている)

この四国新幹線、50年前の1973年に作られた全国の新幹線計画のうちのひとつです。

当時、国は、1985年度を目標に沖縄以外の全県に新幹線を走らせる計画でした。しかし、その後のオイルショックやバブル崩壊、国鉄民営化など、時代の流れの中で計画は大幅に遅れています。近年になって、九州新幹線(2011年)や北陸新幹線(2015年)、北海道新幹線(2016年)など、全国計画のうち優先度の高かった路線から、やっと少しずつ開業しているという状況です。

現在も、全国各地では着々と新幹線の工事が進められています。一方の四国新幹線ですが、当時優先順位が低いと判断されてしまったため、計画から半世紀たった今も工事すら始まっていません。まだ順番が来ていないのです。四国の経済団体などで構成される四国新幹線整備促進期成会が、「さぁ、次は四国の番だ。」というキャッチフレーズを掲げて活動しているのには、そうした意味が込められています。

ちなみに、皆さんもご存じの通り、四国と本州を新幹線で結ぶためには瀬戸内海を越える必要があります。計画当時、折角なら道路と一緒に新幹線も通れる橋を作ってしまおうということで、瀬戸大橋や大鳴門橋には新幹線を通すためのスペースも作りました。瀬戸大橋、大鳴門橋ともに架かってから30年以上経ちますが、新幹線は未だ四国に到達していません。スペースは空いたままです。

新幹線があると何がいいのか?

 東海道新幹線

いま、四国の2大都市は松山と高松ですが、お互い移動しようとすると、どれだけ急いでも2時間掛かります。いくらお金持ちがどれだけお金を掛けたとしても、ヘリコプターをチャーターしない限り、高速道路、JR特急、高速バス、どんな手段を使っても2時間以上です。

一方で、松山・高松から東京までは飛行機で約1時間30分。今やLCCを使えば数千円で行けます。隣の県よりも東京の方が近くて便利ですから、人は東京へ流れ、四国4県の結びつきが薄くなるのは無理もないことです。

九州では2011年に新幹線が開業し、それまで2時間以上掛かっていた福岡-熊本間は33分へと縮まりました。結果として九州島内の人の往来・交流が増えたことがデータからも明らかになっています。私はその頃たまたま福岡市に住んでいたのですが、それまで帰省には丸一日かかっていた鹿児島の友人が放課後に思いつきで帰省するようになったり、久留米市から車で通っていた店員さんが「寝坊したので新幹線で来たら間に合っちゃった」と笑っていたりと、人々の生活スタイルが大きく変わったのを実感しました。「いざとなれば新幹線を使えばいい」という安心感がもたらす効果は、想像以上に大きいのかもしれません。

松山-高松は、新幹線ならたったの42分。松山-大阪だって1時間半です。「どうせ使わないし」と思う人もいるかもしれませんが、逆に全県民が毎日使ったらパンクしてしまいます。使いたい人が、使いたいときに使える状態にあるということが大事。同じ日本で、同じ税金を納めているのに、四国の街だけが新幹線を使えないというは不公平です。

「四国は人口も少ないし、、、」という声はよく聞きますが、全国的に見ても決して人口が少ないということはありません。たとえば2015年に開業した北陸新幹線の主要都市は、金沢市47万人と富山市42万人。対する四国は松山市51万人、高松市42万人です。人口40万人以上の地方都市で新幹線がないのは他に大分と宮崎だけで、この規模の地方都市で新幹線が走っていないことの方が珍しいのです。

いま、なぜ新幹線なのか?

 亀老山展望公園

かつて瀬戸内海は日本の大動脈でした。日本中の武将が大三島の大山祇神社に甲冑を奉納したといわれるように、瀬戸内海一体は相当に栄えていたといいます。陸路といえば徒歩しかなかった時代、船が最も速くて沢山の人やモノを運べたので、船へのアクセスが便利な場所に人やモノが集まったからです。

明治に入り鉄道が整備され、自動車が普及し、陸路の方が速くて沢山の人やモノを運べるようになりました。交通の主役が陸路に移ったため、本州と陸続きでなかった四国は「離島」になります。今では本四連絡橋があるので離島ではありませんが、アクセスの悪い四国にはモノも人も集まりにくいのが現状です。

そして四国には、全国では当たり前のように走っている新幹線がありません。四国にも高速道路は着実に延びてきてはいますが、どれだけ高速道路を整備しようと、在来線を高速化しようと、最高時速は100km程度です。時速300km以上のスピードが出せるのは新幹線だけですから、これは大きな違いです。

言い換えると、他県はみんなスマートフォンを持っているのに、四国の人は未だガラケーを使っているような感じです。クラスの皆がスマホを持っている中で、1人だけLINEも動画も満足に扱えないガラケーだったとすると、学校生活も色々大変だろうなということは、皆さんも容易に想像できるのではないでしょうか。

既に日本では、愛媛もそうですが、地方からどんどん人口が減り始めています。人口が減るということは、アクセスが悪く、人やモノが集まらない地域はどんどん衰退・消滅していくということです。将来の四国、愛媛の交通をどうしていくべきか、そろそろ本気で考えないといけない時期なのかもしれません。

(注)本文中の「離島」は法令上の定義とは異なります

これからの四国

 大洲城

四国新幹線を作るためには、まずは国土交通大臣が「四国新幹線を建設する」と決める必要があります。そこから工事が始まりますが、新幹線に使うことのできる毎年の予算は限られているので、開通するまでには30年くらい掛かるのが一般的です。

冷静になって考えないといけないのは、30年後というと2050年。本州には新幹線よりもずっと速いリニアモーターカーが開通している予定ですし、自動車も空を飛んでいるかもしれません。空飛ぶ移動が当たり前になれば、四国の「海を隔てている」というハンディはもはやハンディではなくなりますし、その頃でも四国に新幹線が本当に必要なのか、正直私もよく分かりません。

四国が今後よりいっそう輝いていくために、みんながワクワクできる愛媛になるために、将来どんな乗り物があるといいのか。それは新幹線かもしれませんし、そうでないかもしれません。2050年の四国、そして愛媛の交通について、皆さんと色んな議論が出来ると嬉しいなと思っています。

※四国新幹線の整備効果など本文中では紹介しきれませんでしたが、下記サイトが詳しいので、興味のある方は是非ご覧ください。

 四国新幹線整備促進期成会 http://www.shikoku-shinkansen.jp/index.html

ABOUT ME
酒井 聡佑
1991年松山市生まれ。九州大学在学中の2011年に九州新幹線が全線開業。「なぜこの感動を四国では味わえないんだろう」という率直な疑問から、「四国の困っていることは新幹線で大概解決できるのではないか」と考えるに至り、以後ライフワークは四国新幹線。京大大学院で都市計画・交通計画を学んだ後、2016年国土交通省入省。北海道や霞が関での勤務を経て2021年4月より現職、東京一極集中について研究している。
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