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たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

事業

救う食

給食屋の救食

給食屋という職業

 皆様初めまして、つい最近加入させていただきました八尋雅哉と申します。よろしくお願いいたします。人様にお披露目するような文章を書くのはシャーペンの芯の残量を気にしていた時代以来で、進歩ってのはすごいですね。今は充電の残量を気にしながら書いております。

 さて、私給食屋です。給食屋とは介護施設や病院等の厨房を預かり受けて食事にまつわる仕事全般を請け負う仕事です。給食屋というワードは私が勝手に作って使っているものであって、「給食受託業務」と申し上げるのが正しいのかなと思います。業務内容に関しましては、今ここでご説明申し上げるより、この後の流れに沿って必要箇所だけお話しさせていただきます。

給食屋の懸念

 給食屋は一年365日毎日朝昼晩の3食を入居者様患者様の方に提供しております。元日の朝も大晦日の晩も台風の日も大雪の日も。人間は食べるという行為を止めることができない。だから私どもの抱える責任も重大です。このいかなる状況でも食事を提供し続けることの難しさをここ数年ひしひしと感じております。例えば今で言うと新型コロナウイルス。もし厨房職員が1人でも感染したとしたら、一緒に勤務にあたった従業員全員濃厚接触者となり自宅待機の状態になることでしょう。もし半分の人員が自宅待機になると厨房を運営することが難しくなります。もし他の事業所のスタッフや管理職が現場に立つことによって人手の不足を補えたとしても、保健所の指導で厨房設備を使用禁止とされた場合は、もう弁当や仕出しに頼るしかなくなります。これは新型コロナウイルスだけではなく食中毒や火災の場合でも同じことが言えます。人員が削られてもなんとかできる可能性はあったとしても厨房設備が使えないとなるとどうにもこうにもなりません。実際昨年県外で起きた集団給食での食中毒事例を聞き取りさせていただいたところ、営業停止の5日間、保健所の指導の下、厨房設備や食器や備品に至るまで全て使用禁止になったそうです。

 そんな懸念を抱えて10数年この業界でやってまいりましたが、一昨年、自身の法人を持つ事によってこの懸念を払拭できるシステムへの着手ができ、今年やっと形にできることができました。まだまだハードソフト共に荒削りですので、これから幾度もトライエラーを繰り返しながら精度を上げていく必要はありますが、間違いなく「最初の一歩」を踏み出すことができました。

給食屋×キッチンカー

 そのシステムが「キッチンカー」です。キッチンカーと聞いて恐らくみなさん思い描くのはクレープであったり唐揚げであったりの軽食やスイーツが多いと思いますが、その規模では施設で生活しておられる方の食事を賄うことは困難です。なので私どもが作ったのは、食材・燃料・電力・水の供給が整えば50人が生活しておられる施設で何日も食事が賄い続けられる、ミニマムではありますが通常の厨房機能を備えたキッチンカーです。これの存在によって抱えていた厨房停止に対する懸念を大幅に減らすことができる上に、普段の給食業務とは別の飲食店営業許可を得たキッチンカーですので、介護施設でのイベント食も多様化でき、施設で生活されておられる人たちに今まで出来なかったような食の楽しみも提供できると考えております。

 という構想で物事を進めていく中、このシステムが持つ可能性に気付きました。

(365日調理しているスタッフ)+(大量の食事が作れるキッチンカー)

これはうちのお客様だけに留めていいのか?違うよな。

システムの可能性

 近年日本のあちこちで発生している自然災害。3年前には西予で甚大な被害をもたらした水害もあり、避難所生活を余儀なくされた方も大勢いました。その時私は神奈川におりまして、何もできない自分に苛立ちを感じていたことを覚えております。私どもは人命救助や瓦礫の撤去などの術は持っておりませんが、大量調理ができます。そして移動して大量調理ができるキッチンカーも持てました。やるべきことは

『災害支援』

(2018年 野村町の水害)

給食から救食へ・趣味からボランティアへ

 特に私たちが得意とするのはお年寄りの食事。ですのでボランティアや物資の届きやすい中心部の学校などの避難所ではなく、過疎地や病院等のお年寄りの多い避難所への出動を主とし、病気を抱えておられる方、歯の悪い方、嚥下の弱い方、また逆に乳児幼児など、給食屋として普段の業務でしていることが生かせる支援ができればと考えております。

 もちろん簡単な話ではありません。この時点で間違えてる所があるでしょうし、クリアにしていかなくてはならない点も数多くあり、思い付いた所から着手していってるのが現状です。食材や物資の調達。人員の確保。指揮命令の権をどこに置くか。実際に被災現場に到着できるのか…。考えれば考えるほど実現できるのかどうか疑問符の付くことが盛り沢山ですが、現状やれることを一つ一つ明確にしていっております。差し当たって食材と物資に関しては、自治体等の備蓄物資とは別の方法でも確保できることを目指し、普段の給食業務でお付き合いいただいております多数の企業様・個人事業主様より物資や流通に関して支援してくださる旨のお約束をいただけております。人員の確保も弊社スタッフだけでなく社外からも支援していただけるよう多方面へとご説明差し上げてる段階です。その外部からの人員確保の為に現在行っているのが

「オート二輪事業」

「マリン事業」

「自転車部」

の活動に繋がってきます。突飛な三項目に「へ??」となりますよね。災害支援や料理に興味がない方に別要素を窓口として弊社を知ってもらい考え方を理解していただければと思い活動をしております。これらの活動は一見災害支援とは無縁に思われるかもしれませんが、過去の事例を見てみると実は災害が起こった際に有効な要素を含んでいる物だと実証されております。例えばキッチンカーが進めない状況に陥った時に、進行できるギリギリの所まで行き、その先の運搬をMTB・自動二輪を用いたり、水害に関しては水上バイクの使用を想定して…

(悪路での食事運搬を想定した弊社スタッフの練習)

 と、仰々しく書きましたが、正直発想の発端は弊社スタッフの「好きなこと」から始まっております。自分の好きなことをもっと広く知ってもらいたい。体験してもらいたい。これらに興味を持たれる方は結構おられると思います。でも何から始めたらいいかわからない。ハード面が高額で取っ付けない。そのような面でお困りの人に向けての入口になり、一緒に楽しみながらサーポートし、弊社の構想を知っていただき、非常時にはこちらの手助けをお願いできれば。と、若干いやらしい思想も抱えながら活動しております。

どう動く?

 さてさて、ここから先が難題ですね。非常時にどう動くか?弊社独自の判断で動くと、そこにあるのは混乱しか無いでしょう。やはり全体を統括できる組織からの命を受けて動くべき。ではその組織とは?県市町村になりますよね。そこまでわかっていて何が難題になるのか?それは、現状のうちのシステムがまだ完全な物ではない点。自治体や施設の防災訓練に実践的要素を組み込みながら参加させていただき、問題点の洗い出し改善・技術の向上を繰り返さない事には形は出来上がらないでしょう。机上のシミュレーションでは想定できない部分は多々あると思われます。そういった不完全な物を市町村が受け入れてくれるかどうか。下手すれば門前払いもあり得るのかなって考えてしまいます。

 今回コラムを書かせていただいたのには実は下心があります。申し訳ありません。このまだまだ不完全な物を完成に近づけていくには、自己でのQ&Aは限界を感じております。そこでここにお集まりの皆様に様々なQを投げかけていただきたいと考えました。是非に難問を放り投げていただきますようよろしくお願いいたします。また所属されている企業様での防災訓練がありましたら、炊き出しの部分で弊社にお声かけいただけたら幸いです。

 このキッチンカーでの救食システムが活動できる場面が来ないことを祈っております。が、もしもの時には1人でも「食で困る人」を無くせるよう最善を尽くしたいと思っております。

 長々と絵空事を並べた感じにはなってしまいましたが、最後までお付き合いいただき有り難うございました。

ABOUT ME
八尋 雅哉
皆様はじめまして。施設給食を中心として事業を営んでおります。食に限らず様々な観点からの『総合的なおもてなし』を目指して多方面へと目を向けてあらゆる可能性を探っている、創業3年目の小さな会社の代表兼GMを務めさせていただいております。 まだまだ空回りが多いですが地元愛媛・四国の将来の為に何か形を残せたらと考えてます。