今回は、たてヨコ愛媛のみなさんのご協力で大成功を収めた「宅タク便」から繋がった、新タクシープロジェクトについて取材に行ってきました!(2021年5月13日取材)
宅タク便
宅タク便は、飲食店のテイクアウトフードを”タクシー”が自宅まで無料配送するという新発想の取り組みです。
新型コロナの流行により、人との交流や外出が規制され、街はがらん・・・。
そんな沈みがちな世の中に、少しでも前向きになれるようにと、外出制限を逆手に取った「テイクアウト事業」に踏み出すたくさんの飲食店が現れました。そうすると次は、そのテイクアウトフードをたくさんの人に届けたい、という熱い思いを持った人たちが現れました。
こうして共通のビジョンを持つ人と人とが共鳴し、連鎖して、この「宅タク便」が生まれました。
「飲食店が頑張ってはじめているテイクアウトサービスを、デリバリーして販路を広げたい!」
「ステイホームで頑張っている皆さんに配送料無料でテイクアウトフードを届けたい!」
こんな思いを持ったたてヨコ愛媛の有志が集まり、様々な協力を得て2ヶ月間運営し、2020年7月30日をもって大盛況のうちに終了しました。ボランティアのメンバー達で必死に繋いできたハートフルな活動でした。
この活動のハブ的役割となったのは、いうまでもなく”タクシー”の存在です。
数社のタクシー会社さんがこの取り組みに手を挙げ協力してくださったそうですが、中でもかなりの存在感を発揮されていたのが、「東洋タクシー」さんだったと、宅タク便協賛者の一人はおっしゃいます。これまでのタクシー会社のイメージを覆すような、フレッシュさとバイタリティが印象的だったそうです。
新鋭タクシー
東洋タクシー株式会社を経営されているのは、たてヨコ愛媛メンバーの白石さんご夫妻です。
黙っていてもパワフルさが滲み出る底抜けに明るい奥様と、落ち着いていて優しい口調が心地良い聡明なご主人の、最強タッグ。
「No 白石、No 東洋タクシー」と確信するまでに多くはかかりませんでした。
お二人は経営者でありながら、配車室でアレンジするだけでなく、ご自身がプレイヤーとして車を運転され前線で動き回っていらっしゃいます。
普段は得意なエリアで熟知した道を運転されることが多い中、宅タク便の活動中には、さまざまな地域から配達依頼があるため、お弁当を乗せて慣れない道を汗水流しながら回ったと、初めての取り組みに奮闘されていた日々を回想されました。
この宅タク便への参入をきっかけに、お二人が以前から課題としていたタクシー業界の古風なイメージの脱却、交通ビジネスの改革に向けて、本格的にギアが入ったようです。
そんな時に、たてヨコ愛媛の井上さんからの紹介で、チョイソコの運営をご提案されました。
まだ構想段階中の打診でしたが、白石さんご夫妻は「はい!やります!」と二つ返事で乗っかったそうです。
オンデマンド型交通
チョイソコをひとことで説明すると「サブスク・乗り放題タクシー」です。
近年、全国的にオンデマンド型乗合交通という新しい交通モードが導入されています。
この取り組みの背景にあるのは、高齢化社会。
それぞれの地域に多くの高齢者が暮らしています。しかし交通空白地域では、車がなければスーパーの買い物や持病のお薬をもらいに病院に行くなど、生活する上で欠かせない”移動”が非常に高いハードルとなっています。
高齢者が生活のために無理をして車を運転しなくてもいい町。 高齢になっても必要最低限の外出に困らない町。
今後も増え続ける高齢者への積極的な外出支援として、まちづくりの一環ではじまりました。
チョイソコ実証実験
東洋タクシーさんと久枝地区まちづくり協議会が手を組み、昨年から入念に運行計画を思案されたのち、2021年1月~6月末までの間、実際に実証運行をしていました。
エリアは、松山市の城北に位置する久枝地区です。久枝地区がターゲットとなったのは、さまざまな地域への「日常生活の移動」に関するアンケート結果と75歳以上の人口割合のデータに基づき、ニーズが高いと判断されたからだそうです。
<チョイソコひさえだの特徴>
・3000円/月の定額で会員制
・乗りたい時に電話で予約
・希望に近い時間帯での利用が可能
・目的地へのルートに合わせて複数人が乗合
・停留所は利用者の近所に独自に設け、久枝地区には200~300ヶ所
チョイソコがバスや電車と違うのは、決められた時刻表がないこと、停留所が圧倒的に多いこと、目的地まで運んでもらえること、まさにタクシーならではの利便性がそのまま反映されている点だと思います。
特に停留所の自由度の高さは画期的で、会員さんのお家を停留所にしてしまえば、お家までお迎えに来てもらうことも可能になります。
チョイソコひさえだでは、地域の事業所に協賛金を募り、助成金や自治体予算などの税金を投入することなく協賛金+会員費(サブスク)で運用するという、全国でも初の取り組みをしています。久枝地区の3大スーパーであるコープさん・フジさん・セブンスターさん(順不同)は、すでに協賛されており、停留所として頻繁にチョイソコが発着しています。
もちろん買い物や通院だけでなく、会員のおばあちゃんがお孫さんを児童クラブに連れて行き、遊び終わったお孫さんをおばあちゃんちに連れて帰るという、ちょっとの移動に利用される例も多々あるそうです。
新しい取り組みのために初回利用時のハードルが高いそうですが、一度利用してしまえばその便利さの虜になるそうで、リピーターさんがすでに定着しているそうです。
ヘビーユーザーになると、ドライバーさんも会員さん同士も、自然とお名前やお家を覚えてしまい、車内では生き生きと会話を楽しまれているんだとか。
こうしてお互いが信頼し合い、支え合いゆずり合い、まちづくりの仲間として協力し合う「しあわせな町」を実現させることがチョイソコのビジョンです。
町の人々の笑顔をガソリンにして、今日もチョイソコが走っています。
しあせな町づくり
久枝地区に在住の私にとって、この取り組みは本当に嬉しく思います。
松山市の中心に事務所を構えるタクシー会社さんが、わざわざ郊外のエリアで力になってくださり、地域の活性化のために毎日走り回っているのを知って感動しました。
今後は、台数を増やし、もっとチョイソコの知名度をあげて、たくさんの方に利用してもらえるようになるのが目標だと、熱い意気込みを語ってくださいました。
ーーしあせな町づくりーーまさにたてヨコ愛媛の理念とも合致しているのではないでしょうか。
みなさんのお力をお借りできれば、相乗効果や新しい化学反応が生まれないかと、ワクワクさせられる取材となりました。
白石さんご夫妻のまっすぐな思いを皆さんにお伝えしたくて、つい長文になってしまいました。
駄文を最後までお読みいただきありがとうございました。