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15兆円市場の可能性!?地方課題を解決するかもしれないスマート・テロワール

こんにちは。稲見(いなみ)です。

5回目のコラムです(自己紹介・過去記事)

今回は、地方活性化や農業畜産漁業などの一次産業に関連するテーマでコラムを書きたいと思います。

興味深いビジョン・理論を紹介します。
カルビー元社長の松尾雅彦氏が提唱するスマート・テロワールです!

松尾雅彦「スマート・テロワール」学芸出版社,2014

この本を手にとったきっかけは、たてヨコ愛媛にもゲストで出演いただいたこともある井上さんのこの投稿。

自動車の年間輸出額が12兆円ところ(本の記載は古いデータなので、今はもう少し多いと思います)
スマート・テロワールで15兆円産業をつくることができる可能性あるとのこと。

書籍の中でも

わが国に唯一残された成長余地は農村・農業にある

松尾雅彦「スマート・テロワール」学芸出版社,2014,P6

食料自給率が三九%だという厳然たる事実です。一般に日本にとっての弱みと理解されているかもしれませんが、反対です。我々が食べているもののうち、国内産が三九%ということは、外国産が六一%なのです。つまり、日本での需要に応えられる生産の余地がまだまだ大きいことを意味します。輸入原料を国内産に変える機会があるということです。こんな潜在需要のある産業は他のどこにあるでしょうか。

同書 P18

カルビーが「ポテトチップス」や「じゃがりこ」などのポテトスナックを製造するにあたって、原料となるジャガイモ生産のために全国で契約している農地面積は7千ヘクタールになります。
先述した「減反した水田100万ヘクタール」はその約150倍に相当します。そして、ジャガイモが生み出すカルビーのスナック製品の売上(工場出荷額)は年間一千億円です。その150倍とは15兆円です。日本を代表する産業である自動車業界の年間輸出額・約12兆7千億円(財務省「財務省貿易統計」2012)を超えるほどです。

同書 P19

うーん。すごい。

地方や愛媛の未来はどうなるのか不安、なんとかしたい、自分の住んでる地域を盛り上げていきたいと思ってる人におすすめな本です。


このコラムでは、スマート・テロワールってどんなもの?というのを、私なりに紹介したいと思います。
(本の構成どおりに紹介してはないです。かなり簡略にしてます。興味をもったら本読んでください)

私も一次産業に従事してるわけでもなく、現場を知ってるわけでもないので。
「ちょっと違うよね。」ということもあるかもしれません。
たてヨコ愛媛グループのコメントでディスカッションできればと思います。

それでは、はじめます!

地方の課題

スマート・テロワールは、①貿易収支の改善、②少子高齢化、という日本の難問を解決すると主張しています。
地方課題に関連するところもありましたので、2つ紹介します。

どんどん人が出ていく

地方から都市部へ、人が出ていきます。(しかも若者。特に地方の県の中でも農村地域から。)
人がいなくなることで、産業や行政サービスが維持できなくなったりといろんな弊害がでてきます。

愛媛県も2020年度は移住者数が過去最高の2,460人ですが、転出超過が続いています。

刺激や仕事や学びなど、いろんなものを求めて都市部に出ていますが。。
一方で、地方出身者で都市部在住の4割ぐらいの人が「将来は地元に戻りたい」と考えているというアンケート結果なども見ます。
このあたりは、仕事の問題が解決すると、UJターンが増えるかもしれません。

どんどんお金が出ていく

地方から県外にサービスやモノを販売して入ってくるお金より、地方の人が県外からサービスやモノを購入して出ていくお金の方が大きいので、お金がどんどん出ていきます。

書籍でも「地元の食材を都市物価で買う不合理」ということでこのように記載されています。

日本有数の農業県・農村地帯においてさえ、県民の食料収支は大赤字に陥ってます。十勝地方と高知県の実態は何を意味しているのでしょうか。共通して言えることは三つあります。
一つは、農業界は素材を大量に作り、県外に売っていること。
二つは、外に売った収入により、外に支払う支出が多いこと。
三つは、移出、移入に莫大な流通経費(エネルギー)を使っていること、です。
要約すれば、農業が盛んな地域と言われながら、お金が地元に落ちていない。地域の住民から富を失わせ、余分なエネルギー(石油)代金を外国に支払う経済構造になっています。

同書 P27

都市へ素材のまま出荷し、都市の雇用によって加工され、物流費をかけて戻ってきたものがスーパーに並んでいるのです。それを高いお金で地元民は購入することが当然になっていることは、よく考えたら不自然ではないでしょうか。農村地帯のほうが都市部より所得が低いにもかかわらず、都市から逆流する商品、つまり東京価格で買っているのですから、ますます貧しくなってしまいます。

同書 P27

スマート・テロワールとは

地方(特に農村)の課題解決する可能性があるのがスマート・テロワールです。

スマートとは「賢い」「利口な」「ムダのない」「洗練された」
テロワールは、『その地域独自の風土・景観・品種・栽培法などが育む「特徴ある地域」を表現するフランス語』です。

目指すのは、地域ユニット内の「自給圏」

食料は地産地消、住宅(木材)も地産地消、電力も地産地消が原則です。ユニット内の物質循環、産業循環、経済循環が可能な単位といえます。食料でいえば、テロワールの人口規模とは、地域内で小さな食品工場を持ち、操業を維持できる顧客数とも重なります。

同書 P41

地元で栽培した、現在自給率の低い大豆や小麦などの穀物をベースにした加工食品を作る。同じく自給率の低い子実トウモロコシを栽培する。その餌で育った肉類を加工し、地元で食す。地元に愛される食べ物ができれば、その地域にしかないオンリーワンの誇りが生まれ、愛着が深まっていきます。

同書 P41

三つのステップ

水田の畑地への転換(飼料等の生産)

水田の畑地への転換、大豆とトウモロコシの作付けをします。

耕種農家と畜産農家の連携

耕種農家と畜産農家との間で子実トウモロコシと堆肥の交換を試行。

地域内の食品加工場で商品をつくる

大豆の加工品や、地域内でとれた生産物を加工し、商品をつくる

全体像

これまでの話と合わせるとこんな感じでしょうか。

飼料など輸入に頼っているものも、耕作放棄地や水田からの転用で生産
耕種農家と畜産農家連携し、地域内で食べるものをできる限り生産
地域内に加工場をつくり、地域に合った商品をつくることで付加価値をつけて地域外に販売してお金を得ることや、地域内で消費する。

地域内に加工場があることで、仕事が増えてUJターンの受け皿になったり、仕事を求めて都会に出る人が少なくなったりする。

まとめ

今回は、スマート・テロワールについて紹介させていただきました!

ほぼ書ききれてないので、興味が出た方は本を手にとっていただければと思います。

書籍の中では、ビジョンだけではなく、構築マニュアルなどの具体的な記載まであります。

愛媛だったら、「こういう実現方法がある」「共感したor共感しない」など、たてヨコ愛媛グループのコメント欄でディスカッションできればと思います!

それでは、また!

ABOUT ME
稲見 益輔
1983年生まれ。 ”よい会社を強くする”をミッションに、起業支援、会計・マーケティングを中心とした経営サポート、コワーキングスペース運営を業務としている。 十数年大阪で過ごしたのち、2015年に愛媛移住。起業イベントや地域を活性化する取り組みを複数行っている。
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