Column

たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

エッセイ

なぜ、もがき学ぶのか?

情報が刻々と変わるニュースを、重要なテーマの時には、1時間おきか、それよりも早く、どんどん内容を新しくして放送しています。それだけに、新たな情報を求め、勉強し、集め続ける毎日ですが、それだけでは足りないのでは?と、特に新型コロナウイルスが生活に影響を及ぼし始めた去年春から、いくつもの「学び」に手を出しました。同じような感覚を持っている方いるでしょうか?振り返ると、よくもまあタラタラと学んでいたなと、ある種の取り留めの無い「もがきの学び」の1年をここに記し、学ぶ楽しみ、学ぶ意欲とはなんぞや、を問いかけたいと思います。 (え?なんぞやまで届いていない?)

簿記3級 不合格 

長く親しんできた知人の居酒屋が去年5月に店を閉めました。1回目の緊急事態宣言が終わり、愛媛県でも感染の収束が見られた時期だったので、週に数回おじゃましていた矢先のことでした。以前から店の移転を考えていたタイミングが合ったことが理由と言っていましたが、客を激減させたコロナがなければ店は続いていたでしょう。閉じる前に、売り上げの減少に伴う支援金の申請について相談を受けたんですが、その際に話が出た「帳簿」について、ほとんど仕組みがわかっていない自分にハッとさせられました。

手続きが書かれている役所の書面をネットで見つけ、説明してみたものの、数字についてはまったく手が出せず、そうか、事業を営むということはこういうことなのかと、世間知らずを思い知らされたのです。かつ、もし自分がその(事業者の)立場だったらと思うとなさけなくなり、すぐに専門学校の通信コースで「簿記3級」を申し込みました。

さっそく、大きくザクッというと、帳簿の左側の借方と右側の貸方の合計が最終的にぴったりあうように、要素を仕分けしていくことを、ただただ深めていくということに、なるほどと面白さを見いだし、高性能の電卓を新しく買って秋の試験に臨みましたが、途中から勢いを無くして、だらだらと過ごしてしまい、通信コースはお終いまで行かずに終了。無理して受けた試験は不合格でした。やっぱりねー。

ファイナンシャルプランナー3級 不合格

簿記3級の学びの最中に耳を傾けていたラジオ(アプリの「らじるらじる」を使用)から聞こえてきたのは、新型コロナによる経済や労働問題、生活困窮にあえぐ人の相談にのるファイナンシャルプランナーの話でした。ご案内のとおりライフプランをはじめ、金融や保険、不動産などに詳しい専門家は、新型コロナの影響による休業や退職に関する労働問題にも精通し、補償制度をとうとうと説明する声に思わず聞き入りました。

「これこそ今の時代に有益な情報だ」と思い至り、その足で、書店に行き、解説書と問題集を購入。(熱しやすいんです)内容と言えば、お金の積み立て金額や運用などについての複雑な計算のための「係数」の活用、保険、株、投資信託、休業補償、労災補償、年金、土地などなど、多岐にわたります。円高円安など、ニュースで出てくるワーディングも改めて学ぶこと3か月弱(夏休みを頂いてプラプラしていた時間もありました)。

秋に試験に臨むと、自己採点では、合格ラインギリギリ。練習問題をしていなかった不動産関係の、建ぺい率とか求める数式のあたりはあまり練習問題していなかったので、全滅だったんだよなーと思っておりましたら、やっぱりこちらも不合格でした。

コロナと災害に備える 防災士 合格

新型コロナが6月以降、落ち着いた傾向にあったときに思い浮かんだのは、台風や豪雨への備えでした。この時期日本は台風・大雨のシーズンを迎えていました。西日本豪雨から2年という、7月6日、7日の節目を迎えようとするときには、九州、特に熊本県は記録的な豪雨に襲われ、川の氾濫や土砂崩れが相次ぎ、大勢の人が亡くなりました。四国にも長く雨雲がかかり、ダムの放流情報に神経を研ぎ澄ませた数日でした。

この間、感じていたのは、新型コロナと災害という2つの脅威への並行した備えでした。こうした情報ばかり集めている私自身は耳ばっかり大きくなって、実際に避難所で役に立てるのだろうかと、自問自答したのです。こうしたこともあって、防災士の講習会、試験に臨みました。

阪神淡路大震災のあと検証された「圧死」、中越地震で明らかになった「山間部の孤立」、東日本大震災の「津波」とその後の「生活支援」などは、日頃から触れている、災害関連の情報でしたが、やはり、文章問題の中でワーディングが出題されるとドキドキします。台風の中心に向かって吹く風は、時計回りか半時計か(北半球・南半球で違います)など、平時は頭に入っているつもりでも必ず専用の本などで確認しますので、いざテストで「はい問題です」となると、「これでいいんだっけ」と迷ってしまいました。ただ、雪害(大雪による災害ですね)や、火山災害は経験がないため、ゼロからの学びとなり、新鮮でした。

講習会で、一般の町内会などから参加した意欲有る人々と意見交換できたのもやる気に繋がり、こちらは8月に受験してなんとか合格。

観光英語 2級 合格

では、学びの永遠のテーマともいえる、「英語」はというと、おととし暮れのころから自転車と国際観光について関心が高まっていることや、アフターコロナを見越して「観光英語」というジャンルに手を出し、取りあえず2級から臨みました。試験問題は、リスニングとライティングで、行程表「Itinerary」や、ガイドブック「Guidebook」などをみて料金スタイルを確認したり、見所や注意点をまとめるといった問題や、海外の観光地、世界遺産、日本の伝統行事などが書かれた英文を読んで答えるというものでした。

地理や歴史的な見識も問われるんですが、問題集にあった沖縄の「ひめゆりの塔」の描写には、模試的に行う中で涙がこみ上げてきました。この試験で合格しても、松山城や道後温泉の説明がペラペラとできるわけではないですが、説明してみたいという意欲には繋がっています。

海外へのツアーで、添乗員さんが、平易な文章で各方面に交渉しているのを見ていましたが、わたしも、アフターコロナで、時がくればそのような機会が出てくるかもしれません。

“もがいて学ぶ”は楽しい

以上がこの1年の私の学びの一覧でした。見直してみると疲弊しているようで、でも何でもかんでもと楽しんでいる自分に気づかされます。今年は1月中旬からアプリで学ぶ時事英語にはまっており、お酒を飲んで帰ってうっかりスキップしてしまった日と、打ち合わせが深夜までかかってしまった日の、あわせて2日を除いて、毎日、20分程度の学びを継続しています。

では、アプリで英語を学ぶ先にある目標は何か、と問われれば、実は具体的にはないのが現状です。これから海外で働くことを目指すわけではないですし、仕事が現場から離れたいま、英文で仕事を進める機会は皆無となりました。なので、別に英語の勉強をする必要は無いのです。

さらにいえば、簿記やファイナンシャルプランナーの資格がとれなくてもいいのです。それでも、何かを学んでいかなければならないという衝動が沸き立つならば、その衝動を味わい、笑われながらも、もがき学んでいきたい。これは、コロナ禍で先が見えないという現実から、ある意味、逃避したいという思いがあるからなのでしょうか。

そんなことに思いをめぐらせながら、そういえば、きょうはまだアプリを立ち上げていないと気づき(いま午後8時)、慌ただしく学びに入ろうとしているのです。やっぱりそこには、学びの楽しみが待ち受けているのです。

ABOUT ME
本田 ひろこ
1974年6月生まれ。2歳より山口県下関市。高校よりコントラバスに熱中。松山大学在学中に愛媛大学交響楽団、愛媛交響楽団に在籍。96年、秋田県旧二ツ井町主催の「恋文コンテスト」で全国7511通のグランプリに輝き、当時、島田紳助のバラ色の人生に出演依頼あるも固辞。(←酔わないと話さない自虐ネタ)。 97年から記者。徳島局(~01年)→松山局(~06年)→首都圏センター→報道局科学文化部(~13年)→ニュースデスクとして再び徳島局(~16年)→盛岡局に(~19年)→松山局・現職。趣味・広く浅く多様。
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