現在、所属している教育委員会への異動と長男の誕生が重なったこともあり、ここ2年ほど「教育」について三思九思してきました。そして、最も優先すべき投資対象は教育分野であると結論付けるに至りました。
では未来の議論をしましょう。
「教育」とググると…
- 「教え育てること」
- 「知識・技能などを教え授けること」
と、ヒットします。まさに日本の学校教育を象徴する受動的な学びを示しています。
かの福沢諭吉はその著書『文明教育論』にてこう述べました。
「すなわち学校は人にものを教うる所にあらず、ただその天資の発達を妨げずしてよくこれを発育するための具なり。教育の文字はなはだ穏当ならず、よろしくこれを発育と称すべきなり。」
彼は、「Education」を「教育」と訳したのは誤りであったと説きます。Educationとは、それぞれが備える才能を外へ導き出すものであり、学校はその発育を邪魔せず促進する環境であるべき、と。 しかし、教師は活字引と写字器械を製造し、世に無用の人間を送り出していくと痛烈に論じます。
日本の教育と欧米の教育
日本の詰込み型教育や学歴・偏差値主義に対し、自らが考える力を養い、個性を尊重するのが欧米型とされ、しばしば「かけ算」の出題方法で比較されます。
- 日本:5×3=?
- 海外:?×?=15
これら国民性は言語にも表れています。以下は同じ意味である言葉の日本語と英語の比較です。
- 「私は納得のいく将来のために学びます。」
- 「I’ll learn for a convincing future.」
英語では主語の後にすぐ動詞が続き、さながら即座に行動に移す積極的な様子が伺えるのに対し、日本語では文末に動詞がくることから、御託を並べた後でようやく行動に移す消極的な日本人を揶揄しているようです。
北欧の子どもは、森の中で自然と共生し、五感を刺激することによってクリエイティビティを育みます。究極のアクティブラーニングであり、自然の尊さを学ぶには最適なESDであると共感します。
これを日本で実践するには…ここにも地方の在り方が見直されるヒントがあるように感じます。
日本の学力
果たして日本の教育は間違いなのか。 これを否定するのが、国立教育政策研究所による『OECD 生徒の学習到達度調査』です。教育先進79ヵ国における2018年の日本の順位は…
- 読解力15位
- 数学的リテラシー6位
- 科学的リテラシー5位
世界トップレベルの学力を備えていることがわかります。
ただし、読解力については、他の2項目に比べ見劣りします。 ここでいう読解力とは、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するためにテキストを理解し、利用し、評価し、熟読し、これに取り組むこと。」と定義されています。
世界の3分の2を手に入れたデザイナーにして「デザインの到達点」と言わしめたスマートフォン。手のひらで即座に情報を得られる現代においては、「覚えること」よりも「活用すること」が重要であり、万万千千の情報に溢れた時代にリテラシーの低さは大きな障害となります。
人間力の重要性
オックスフォード大学が「AIによる自動化が進むことで、20年後には47%の仕事がなくなる」と発表したことからも、将来どのような能力が必要とされるか断定できず、次代を生き抜く人間力を養い、如何なる時代にも備えることが重要となってきています。
コロナ禍の前年、東京における高卒の有効求人倍率は8.72倍と異常な数字を記録しました。人手不足を背景に、大卒と比較して低賃金で、早期に業務を経験させられること及び採用コスト面でも有利とされていることから高卒市場は過熱化しました。
しかし、この青田買いの状況で懸念されるのが離職率です。もともと高卒採用者の3年内離職率は約40%と高く、社会性が伴っていない若者の未来を食い荒らす現状を防止するためにも、充実したキャリア教育が求められます。
天才を取りこぼさない街
学生時代、部活をどのように決めましたか? 果たしてそれはベストな選択だったのでしょうか。
選ばれなかった分野で極めて優秀な才能を発揮したかもしれませんが、経験しない限りその潜在能力には気付けません。 例えばクルスポのような0to1を学校で網羅的に実践できたら、才能開花の一助となるかもしれません。
多種目に対するノウハウや労力が足り合いなら、高齢者のセカンドキャリアを活かすのも得策です。高齢者が子育て世代を支える社会への転換なくして人生100年時代は乗り切れません。 また、多様な大人と関わることで早期に社会性が身につきます。
さらに、DXの余地があることからも教育分野は大きな可能性を秘めています。タブレット端末により個々の能力がデータ化されれば、補うべき分野や伸ばすべき才能に最大限のアプローチができるかもしれません。
SDGsは社会や環境の持続と経済発展を同時にビジネスとして構築するよう示されていますが、sustainableなら次世代投資。教育分野にこそSDGsを取り入れるべきだと考えており、 SDGs×教育=持続可能な社会としてアプローチしていきたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
自分が親になってから、あらゆる施策を我が子というフィルターを通して見ることで、急場しのぎの起案ではなく、未来を見据えた事業計画を意識するようになりました。 子どもの笑顔が絶えないまちづくりこそ、われわれが目指すべき未来像であると確信しています。
「天才を取りこぼさない街」を一緒につくりませんか?
岡野祐介