プロジェクト活動報告

リアル・スタートアップウィークエンド!〜『宅タク便』サービス開始までの舞台裏〜

 「プロジェクトの発案が4月30日、5月5日にサイトを公開し、翌6日にサービス開始」という一見無謀とも言えるチャレンジ!タテヨコ無尽のつながりがその力をフルに発揮した「宅タク便」サービス開始までの物語をご紹介します。

はじまりは、松山市職員の一言のつぶやき

 最初に小さな一言を発したのは、松山市職員の鴻上哲史さん。

 テイクアウトで飲食店を応援しようと3月18日にスタートした「別府エール飯」のことを知り、松山でも同じような取り組みができないだろうか、とサイボウズの久保正明さんに向けて何気なく発した一言が発端になりました。

 久保さんから、タテヨコメンバーであるプロダクトデザイナーでリプルエフェクト代表の山田敬宏さんに話が伝わると、 またたく間にロゴデザインが完成。同じくインスタグラムで飲食店応援企画「ToGo愛媛」の活動を展開していた松波雄大さんもジョイントして、4月6日にFBページ「松山テイクアウト部」が発足しました。

「タテヨコ」無尽に広がるバージョンアップの波状攻撃!

 「松山テイクアウト部」の会員数は3日で500人を突破!そこに飄々と登場した大美和博さんが、次々と投稿される店舗情報をサクッと一晩でWebサイトにまとめて公開し、その恐るべきスピード感でメンバーを唖然とさせます。(のちに、アイムービックの町田祐一郎さんが加わり、更にバージョンアップ!)

 更に「テイクアウト部」の活動を知った愛光学園高等部の先生からは「地理を専攻している1年制有志で、店舗をGoogleマップにまとめて協力したい」との申し出が。

 松山市職員の一言から始まったアイデアは、7,788人が登録し、539店舗を紹介する、松山の食の一大メディアに成長しました(※8月31日現在)。「テイクアウト部きっかけで、知らなかったお店を初めて利用した」という声も多く寄せられています。

4月17日、非常事態宣言全国拡大

 首都圏や大都市を中心にコロナウイルスの感染は拡大を続け、愛媛県内でも連日新しい感染者の発生が報告されるように。

 コロナ架で苦境に立つ業界は数え切れず、また、在宅勤務や公立小中学校の休校などの影響で、多くの人が自宅に籠もって過ごさざるを得ない状況が訪れました。

全国初の試みタクシー業界と飲食店、ステイホームでがんばるみんなを、地元企業が寄付金で応援

「宅タク便」プロジェクトは、同時多発的な3つのアイデアが集まって誕生しました。

 まず、東洋タクシー株式会社との間で、テイクアウトのデリバリーサービスについて検討していたのが、砥部町に本社を置くLINK WOOD DESIGN代表の井上大輔さん。

 同じ頃、Shiftの岡本哲郎社長は、宅配用のバイクなどを準備してUberEatsのようなデリバリーサービスを始められないものか…と思案していました。

 ここに登場するのが、タテヨコ発足メンバーでもある三浦工業執行役員のテイト永渕さん。「大手企業から寄付を募り、コロナ禍で利用者が激減したタクシーを活用して格安の配送料でテイクアウト商品を自宅まで届ける」という、「宅タク便」のベースになるアイデアを発案したばかりか、のちにスポンサーとなる企業を回り、150万円余りの寄付の申し出をサクッととりまとめてしまいました!曰く「話したら何か、みんな面白がってくれちゃって…(笑」

 「…大企業役員、強えぇー」苦笑いと共にテイトさんの行動力に感嘆の声を漏らした山田さんは、これら3名の声を聞き、アイデアを取りまとめて、「宅タク便」実現のための奔走を始めたのでした。

6日間でアイデアを形に!リアル・スタートアップウィークエンドの始まり

 プロジェクトの発案が4月30日。GW中に何とかサービスをローンチしたい!という熱すぎる想いが、5月5日サイト公開、6日サービス開始という無茶な目標を掲げて走り始めました。

 ”3日で新しい支援を、有志の力で”…「リアル・スタートアップウィークエンド」の始まりです。 宅タク便の目的は3つ。

  • 飲食店が頑張って始めたテイクアウトサービス、デリバリーで販路を拡大したい
  • 大変な今も、移動弱者や誰かのために頑張っているタクシー業界を応援したい
  • ステイホームで頑張る人に、おいしいひと時を届けたい

 「飲食店」と「タクシー業界」を巻き込むプロジェクトの開始にあたって、一番大変だったのは「業界関係者でない自分たちには現場の声が分からない、簡単には信頼してもらえない」ことだった、山田さんは振り返ります。

 そのハードルを超える力はここでも「タテヨコ無尽」な繋がりの中から生まれました。

「指示待ちの人間が一人もいない」それぞれができることを、勝手にやってくれる、という強さ

 まず、稲見益輔(中央会計マツヤマンスペース)&井上和俊(KuruSPO)部隊が、仕事上で繋がりのある飲食店などを皮切りに、登録店舗への説明と開拓を始めました。

 松波雄大&テイト永渕部隊はタクシー会社にアタック。当初からデリバリーサービスの展開を検討していた東洋タクシーを皮切りに、城北タクシー、四国交通と計3社の協力を取り付けます。

 更に、テイトさんの呼びかけに応じたタテヨコメンバーをはじめとする20名近くのボランティアスタッフが、GW返上の人海戦術で飲食店の情報入力作業に協力を申し出ました。Webサイトの制作は、もちろん町田&大美部隊!!

 サービスローンチまでのタイムリミットが刻々と迫る中、山田さんがリアル机とPCのデスクトップいっぱいに資料と企画書を広げ、頭から煙を立ち上らせて「さすがに心が折れそうだあぁぁあー!!!!!」と声にならない雄叫びを上げていた頃の出来事でした・・・

サイトとPR動画の公開、プレテスト、そしてサービス開始

 その投稿が山田さんの手によってFBに公開されたのは、5月5日、18時9分のことでした。

やっと公開! 日本初のサービスをローンチしました!
飲食店のテイクアウトを企業寄付金による「送料無料」でタクシーでお届けするサービスの開始!!

愛媛の有志が集まって、企画から1週間という爆速でここまで立ち上げたのは、奇跡に近いと思います!

https://www.facebook.com/ripple.yamada/posts/307051046965383

怒涛の「宅タク便」プロジェクトを振り返って

 発案からローンチまでわずか6日間という怒涛のプロジェクトを振り返る、山田さんの言葉は印象的です。

山田さん:まさに、タテヨコという『繋がり』が可能にしたプロジェクトだと思う。愛媛にUターンして2年。今回のプロジェクトに携わる中で、自分の地元に対する感覚が「愛媛から出た人間」のものから「住んでいる人間の郷土愛」のようなものに変わってきたことを感じる。

 「打てば響く」人たちが身近にいる、環境に恵まれているということを、今回改めて強く感じた。指示待ちの人間が誰もいない。みんなが勝手に自分のできることをしちゃうし、限界を超えて疲れた人はそっと連絡がつかなくなる(笑。そんなゆるさもあっていい。

改めて、プロジェクト実績をご紹介

 最終的に宅タク便に協力してくださったタクシー会社は、全7社。料金のとりまとめや各飲食店等への支払い作業には、松山市商工会議所が全面協力してくれました。

  • 東洋タクシー
  • 城北タクシー
  • 四国交通
  • 日章タクシー
  • 城東タクシー
  • 伊予鉄タクシー
  • 仔馬タクシー

 宅タク便のサービスは82の飲食店で活用され、サービス実施期間中に行ったチケットプレゼント企画の利用者も含め、88日間の実施期間中に1,675件のデリバリーが利用されました。

 コロナ支援として始まった宅タク便のサービスは7月31日で一旦終了しましたが、日頃育児などでなかなか外へ飲みに行けない女性などからは「これからもサービスを続けてほしい!」という声が寄せられたそうです。

タクシー×飲食店の新しい取り組み 

 宅タク便をきっかけに、タクシーと飲食店の新しいコラボレーションも生まれました!

 ゆうぼくと東洋タクシー、笑福寿司と四国交通は、コラボレーションによる独自の配達サービスをスタート。ちなみに、笑福寿司の店舗と四国交通の営業所は、お隣どうし。そんなご縁もプラスに働いたのかもしれません。

 宅タク便のような補助は利用できませんが、お客さんに割安なタクシーの配送料金を負担してもらうことで「おうちで楽しむごちそう」の新しいスタイルを開拓しています。

〜プロジェクトを振り返るテイトさん〜

 最後に、プロジェクトを振り返るテイトさんの言葉をご紹介して、記事を締めくくりたいと思います。

テイトさん:ビジネスシナジーを起こすには、異業種とIT活用が重要だと改めて感じました。特にITの利活用が浸透してない分野での有効性は、非常に高い。

 愛媛や松山という地域の中で、お互いをライバル視して争うよりも、同業あるいは異業種間で連携して知恵を出し合い、新しい市場を生み出すことができれば、大きく枠を超えていくことができる。何にでも通じることだと改めて感じています。

 「困ってるみんなの助け合い」から始まったプロジェクトでしたが、キレイごとだけではなく、参加した誰もがそれぞれ、自らのビジネスにも繋がる大きな学びを得たのではないかと思っています。

 あと一つ。タテヨコでは長期プロジェクトもいくつか走っているが、本当の意味で力を発揮するのは、今回のように「短期間でまとまったプロジェクトを、がっと作ってしまう」という短期決戦なのかもしれないですね。

 タテヨコ無尽の連携が生んだ全国初の試み「宅タク便」

 多くの企業や団体、ボランティアスタッフが、所属の垣根を超えて「コロナ禍で困難に直面している業界やステイホームで頑張る人たちを応援したい」と立ち上がった宅タク便。今回の経験は、新たなプロジェクトの種となって今後も広がっていくのだと思います。

 唐突なプロジェクト開始の申し出を快く受け入れて協力してくださった飲食店・タクシー会社。支援を寄せてくださった地元企業、プロジェクトの実行に尽力してくださった皆様、ボランティアスタッフの皆様、煩雑な代金の支払いをとりまとめてくださった商工会議所の皆様。本当にありがとうございました!!