「では、土曜日の午前中配達しますね。」ROOMS TO GOという米国でも大手の家具屋さんでの会話である。こう言われたらあなたは何を期待するだろうか?
朝9時ごろから待って、11時になってもベッドは届かない。そわそわし始める。12時になる。来ない。気長に待つこととした。そして、日も暮れかかった夕方5時にそのベッドは届く。日本人のあなたなら小言の一言でも言うか、人によっては配達員を怒鳴りつけるかもしれない。しかし私は思った。「よかった!今日中に来てくれて。」そう、その日のうちに届けば万々歳。始めからそんなものだ思っておけばイライラすることもない。
私は27歳の時海外で働くことを夢見て愛媛県にある製造業に転職した。もともと工学部だった私は、しばらくは本社のある松山で機械の設計に従事した。そして入社8年目の2008年に、念願の海外勤務を命じられる。その時私は35歳、奇しくもリーマンショック直前のことであった。私の使命はアメリカ支社のセールスマン、サービスマンに技術指導をすること。ロサンゼルスに半年、ニューヨーク(正確にはNJ州)に1年、シカゴに1年と、米国の三大都市での勤務を経験した後、最後は南東部ジョージア州にある現地工場で6年余り暮らすこととなった。
仕事柄幸いなことに、多くの時間をアメリカ現地社員と過ごさせていただいた。その間、世界とはなにか、日本とは何かを多く考えさせられ、学ぶこととなった。その経験を皆さんに少しでもお伝えすることが私の使命ではないかと感じている。
冒頭の話はほんの一例であるが、米国に行って一番大事だと感じたのが、このような「フレキシビリティ」。包容力というか鈍感力というか、何が起きても「こんなものか」と心から割り切れるメンタリティ。そういう見方をすれば、逆に日本がいかにインターナショナルでないかが見えてくる。日本のように何日の何時に来ますと言って、正確にその時間に到着する方が異常であるという認識が必要である。ビジネスでお客さんを訪問する際に少しでも遅れようものなら電話しなきゃ、と思うのが我々。
しかしそんな場面は世界ではまれである。また極端な例かもしれないが、「今週のいつか来ます」ということもしばしばある。これははたして国民性なのか?そしてどちらが正しいのか?そのあたりを私なりに考察していきたい。
テイト 永渕