Column

たてヨコラム

たてヨコメンバーによるフリーテーマのコラム

デザインビジネス

【ロゴデザイン】デザイナーが考えてた幾つかのこと。

「え?たてヨコ愛媛にロゴがある理由?」
「なんか、そのほうがイベントやるときとかさ、対外的にも格好つくじゃん?」

なんて話を誰かとした訳では無いですが、4300年前に私達の祖先は印章として、自分の持ち物だとか、家族だとか、組織だとか、「なにかの領域を他と区分するため」に単語や絵を用いているそうです。
身近な所ならば名字もそう。ママさんバレーでも、父兄会でも、はたまた、暴走族のチーム名ですら、それを構成する人とその他との区分、そして、その区分されたグループの印象を作り、1つの塊や集まりとなります。

ロゴデザインに関しては「ブランディング」として皆さんご存じだと思います。ブランディングもこの区分による差別化を元にした、憧れや満足感を満たす行為であり、企画やアイデアを推し進める帆船の「帆」、つまりアクセラレートさせる強力なツールだったりするのです。

こんなペースで当コラムを書いていくと、超大作になってしまいかねないので、実際デザイナーが何を考えて、どんな感じで完成したのかを知って頂き、皆さんの普段の仕事や企画、イベントの魅力増に繋がればと思います。

【ロゴデザインがスタートする切っ掛け】

先に書いた通り、「区分による差別化する必要」が生じたのが切っ掛けとなるはずです。今回は2019年に半年間開催されていた「NewsPicksユーザーグループ愛媛」という活動から、2019.09.17、「タテヨコ コミュニティ企画」という企画書を稲見益輔氏がまとめたのが「区分による差別化する必要」つまり、何らかの人のグループが誕生しようとする事がロゴデザインを作る切っ掛けになります。

この時、仮称でしかなかった「タテヨコ」が後のミーティングで正式名称として決定し、全てはそこから動き出すこととなりました。

たてヨコ愛媛のロゴデザイン】

ロゴデザインを起こす時に、デザイナーがどんなことを考え、どんなことを気にして、どんな作業をしてるのか。あまりネットを見ても公開してる人は居ないですよね?

正直、デザイナーによって変われば、案件によって変わりますし、今から書く事が正解かと言われると、「私のやり方です」としか言えませんが、私の場合はパッケージでもプロダクトでもロゴデザインでも、どんなデザインする時も必ず、「言葉を紐解く」ことからはじめます。

意外かもしれませんが、スケッチブックよりもまず私が使うデザインツール、実は「メモ帳」だったりします。(最近はSimplenote使ってます)

〇 PHASE01【意味を紐解く】

人が何らかの想いを伝達をするに当たり、「言語」「言葉」「言霊」にはその人の想いが必ず乗ってると思っています。松山市では「ことばのちから」という取り組みがありますし、小さい頃から俳句を親しんできた土壌だったこともあるかもしれません。

クライアントから出てくる言葉を額面通り取り上げるのではなく、必ずクライアントの話す言葉の行間を読み解くために、言語をとらえ、そこに込められた細心の意味や想いなどを分解し理解していきます。

今回の想い(コンセプト)は
「企業・職種・職域を越えて、愛媛で1番おもしろい人が集まるコミュニティ」「多様性・成長・未来」「タテヨコ」の3つが上がってました。

上記のように関連する言葉を探し出し、1つ1つの言葉が持つ意味や語源を探り、今回我々が意図する世界観は何処にあるのだろうか?の問いを繰り返して模索していく行きます。

その中でたどり着いた1つの解。
タテ」と「ヨコ」の関係とはそのドット数(人数)が増えれば無限大になっていくということ。そして、その「タテ」と「ヨコ」のドットが繋がれば、そこに意味や印象が発生し、メッセージになると言うこと。

今、皆さんが見ているこの文字も、実際は「タテ」と「ヨコ」に並んだモニタの解像度というグリッドが生み出した表現の1つでしかなく、それは連続することで写真にもなれば、文字にもなるということです。

そこで、人が認識しうる最低限の形状での表現として、とりあえず頭に浮かんだイメージを実験的にビジュアル化してみた表現の1つが下記の案です。

いやあ、ひどい! これは酷い。笑
出すのをかなりためらいましたが、羞恥心をかなぐり捨てて、一番始めに描いたアイデアの検証データが残ってたのでご覧頂いてます。ww

この段階ではカタカナ、ひらがな、漢字、アルファベットなどをドット文字で表現したり、背景との差を減らすことで、一見グリッドだけしか見えない中で、よく見ると文字が見えるとかどうかなど、可能性を試している段階ですね。頭の中のイメージとしては、もっとモノトーンでエッジの効いた感じになるかと思ったのですが、いやはや、中途半端でなんだったら汚くなってしまいました。
正直、お話になりません。即却下です。

なんども先ほどたどり着いた「解」に立ち返り、PDCAをまわすかの如く、あーでもない、こーでもないと、スケッチしたり、PCで作ったり、場合によっては3Dで起こしたり、よりベストな方向を探っていきます。

〇 PHASE02【構成要素を取捨する】

上記の試行錯誤から、なんとなくデザインに持たせる意味と方向が決まってきたので、可能性を広げながら方向性を絞っていく行く作業になります。
チェック柄や編み込みの糸モチーフ、十字などをあれこれ試しつつ、視認性や美しさなど、ロゴとして必要なデザイン要素でフィルタリングしながらどんどんデザインを進めていきます。
いわゆるサムネイルスケッチって言うレベルですね。
サムネイル(親指の爪)サイズの小さいアイデアを数多く描いて、必要な要素は何か、不必要で削れる要素はないかなど、構成要素を取捨選択して絞っていきます。

描てみては、離れて見て、印刷して見て、壁に貼って離れて見て。白黒反転やグレースケールを試したり、シンプル過ぎないか、デコラティブ過ぎないか、使用用途はトラックか建物壁面か、大きさはどうだとか、ありとあらゆる考えられる利用シーン(UX)に当てはめながら進めます。

〇 PHASE03【ベクトルを決めていく】

見え隠れし始めたアイデア展開方向で表現の深掘りをはじめます。コンセプトに照らし合わせて、カタカナなのか、ひらがななのか、漢字なのかを試してみます。

今回のロゴデザインでは「タテヨコエヒメ」は意味と想いとして「タテ」「ヨコ」「エヒメ」に分解できます。1つ1つ実際書いてみて、今回の表現に必要なグリッド数を探ったり、文字をオリジナルで起こす場合はそのルールを作っていきました。

「たてヨコ愛媛」の特に「愛媛」に関してはかなりの数を書き直したのですが、残念ながらその途中の軌跡は残ってませんでした。下記の「愛媛」の文字もちょっとずつ違ったりしてます。

ここで検証の結果「たてヨコ愛媛」のひらがな、カタカナ、漢字を配した文字列で提案することにしました。

〇 PHASE04【解像度を上げる】

これまでに決定した基本的な構成要素をいかに素敵にビジュアライズしていくかといった「解像度をあげる」作業です。ブラッシュアップですね。
クライアントの想い(コンセプト)にきちんと焦点が合い、かつ、それを見た人達の中に感情を生まれさせる為の焦点も合わして行く必要があります。

ここではそれこそ、全てのデザイナーがそうだと思いますが、0.1mm単位、1ドット単位で位置関係や見たときの心象などを考慮しながら、細かく細かく修正していきます。(プロダクトの時は寸法精度が違うので、0.01や0.001mm単位です。逆に展示会ブースは1mmや5mm単位でデザインしてます)

実は「愛媛でオレンジとか安易だよな~」と思いながら様々なパターンを制作していました。それぞれの色の意味や温度感、安心感、安定感などから、場合によっては色覚異常や視覚障がいなども考慮にいれます。

また、デザインは「伝える」ことであるという大前提から、言葉の検証も必須ですので、本当にブランド名として相応しいのか、サブコピーの有無なども検討し、きちんとネイティブチェックもしています。また、このタイミングでドメイン(tateyo.co)も取得することができたので、PHASE03で決めたテキストルールに落とし込み、表現を確認したりしてます。

〇 PHASE05【完成、一歩手前】

ほぼほぼ決定稿に近くなりました。
散々迷った挙げ句、結局オレンジ系を何十種類と検証する中でこのオレンジ色に落とし込むことができました。
それでもまだ、「たて」「ヨコ」のまわりにあるグレーの枠の太さや色に関して、見えすぎたら画面的にうるさく、肝心の文字の主役感が薄れないように、太さ、濃さを細かく調整しつつ、主役の文字自体シェイプを1ドットの長さで位置を調整したりしてます。

5つの変更点解りましたか?
このとき私は左側だとやっぱり落ち着かなくて、右側の修正したものを最終のロゴにいたしました。

〇 PHASE06【完成】

最後、モノトーン表現や暗色バックバージョンなどを制作し、全て確認して完成です。昔は世の中のコピー機が白黒だったので、非常に気にしましたが、昨今は基本カラーで使われる場合がほとんどですので、そちらを優先させます。

そして、完成です。
実際の業務では1案勝負の時もあれば、3案程度の中で選択して貰う事もあります。あとは、クライアントとの信頼関係と、それまでのコミュニケーションの中で生まれるはずの「共感」を得られるかどうかになります。

最後に【デザインの力】

もちろん、デザイナーが介在したほうが良いものになります。
が、一番重要なのはそこではありません。

先に書いた通り、ロゴとは区分による差別化するためのツールです。
区分による差別化の結果、クライアントが得たい事象はチームや仲間意識その区分に携わるプライドや安心感、良い心証などだと思います。

みなさんが企画書を作るときに、是非、簡単なロゴを作ってみてください。
社内初期企画書レベルであれば、下手くそでも、モノマネでも、パロディーでもOKです。(その場合は対外的に公開するのは禁止です)

ロゴが難しいなら、ネットからフリーのFontを見付けてタイトル文字に使うだけでも大きく異なります。無料で使える日本語フリーフォント投稿サイトなんてものもあります。「FONT FREE
※ただし、凝ったFontを使い過ぎると逆効果ですし、Font数は同一書類で2種類程度に抑えましょう。

一番始めの「タテヨコ」ってタイトルを思い出してください。
MSゴシックでタイトルを表示させるのと、コンセプトを持ったロゴがあるのとでは、見てる方のワクワクの仕方が全く異なるはずです。

ひと手間が企画書や文書などをより魅力的に、参加したいとか、楽しそうとか、儲かりそうとかをいう印象を増大させ、その内容をより面白がってくれるはずです。

People photo created by halayalex – www.freepik.com

また、個人的には上記写真の様に、ロゴデザインをTシャツの写真にあてこんでみて確認してみたりしてます。こうなると、誰でも判断しやすくなりますよね?「このTシャツ、欲しい? 着てみたい?」って。

実はこれも、チームや事業などを立ち上げる際に全体のモチベーションを上げるためのビジュアルとしてもかなり効きます。

「タテヨコ」よりも「たてヨコ愛媛」の方が。
「たてヨコ愛媛」の文字列だけよりもロゴの方が参加したくなるでしょ?

つまりはそういうことなんです。

さて、本当に長々とここまで読んで頂き、ありがとうございました。
そんな辛抱強いあなたに朗報です。
チャララッチャッチャッチャー♪
「デザインリテラシーが1ランク昇格しました。おめでとうございます。」

次回は「企画書の魅せ方」か、「プレゼンでの伝え方」か、「そもそもデザインってさ!」などの文章でお目にかかれたらと思います。
(ただし、要望があれば。の話ですがね。ww)

ABOUT ME
山田 敬宏
大学卒業後、メーカー・デザイン事務所勤務を経て、1999年「有限会社リプル・エフェクト(西宮市)」、2017年「株式会社リプルエフェクト(松山市)」を設立。東京・大阪・愛媛の大小様々な企業の製品開発やブランディング、デザイン、ビジネス創出など、デザインコンサルティングとして「0 to1」業務のブレインを担当。 国内をはじめ、世界3大デザイン賞やビジネスコンテストのグランプリなどを多数受賞。 その他、大学や専門学校での講師や起業イベントなどでのメンター・コーチング、製品開発系のセミナーなども行う。 ビジネス デザイナー / デザイン ディレクター / 製品開発・プロダクト デザイナー / UX・UIデザイナー
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